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黒雫物語(エイプリルフール)

エイプリルフールなので、赤雫物語のIFバージョン。

欠損、鬱注意。
ジャラヒとダリアが、リオを取り戻すために旅をしている話です。
ブリアティルトにリオと来ていなかったら。
auc に全く関係のないIF話。


*****






リオディーラという子は、ダリアにとって特別だった。
仕事が嫌で逃げ出して泣いているダリアのところに現れた不思議な女の子。
どこから来たのかわからないが、ダリアがしょぼくれていると現れる。
あるとき、膝を抱えたダリアにリオが「はい!」と取り出したのは桜の枝で。
小さくて可愛くて、静かで強いその桜の花は、ダリアの心を慰めた。
以来、桜の花はダリアのお守りだ。
そしてリオは小さなダリアの一番の友達。
そんなリオディーラは、ダリアを庇ってあっけなく死んでしまった。
そうしてダリアは彼女を取り戻すことを誓ったのだ。



****



狙っていたターゲットの命が事切れたのを確認して、ダリアは桃色がかった白い花を、その胸元に置いた。
祈りはしない。奪った命を尊きところへなんて、奪われた方からしてみればたまったもんじゃないだろうし、そもそもダリアは信仰心なんて持ち合わせてはいなかった。こうして桜の花を遺体の胸元に置くのは、ただの癖のようなものだ。ただ仕事を終えた印。そこには祈りも懺悔もない。

「終わったか?」

遺体に背を向け振り返ると、すぐに明るい金色が目についた。
金色の髪と、サングラスから覗く冷たい碧の目。仕立ての良い白いシャツと黒のベスト。
街中ですら目を惹く整った風貌の男は、ここ…スラムの廃屋なんて場所だと、目立つどころでは無く異質である。
しかし彼自らは異質さなど感じていないようで、汚れた手を気にせず、白いシャツの袖を捲り上げ、肩の留め金に袖を固定する。
その袖の中身はなかった。
男が目立つのは、その眉目秀麗さだけではない。

「今回は、おれが持ってかれたみたいだな」

戯けたようにそう言うので、ダリアは片眉を上げたが、何も言えなかった。

「まあ、前に肘まで持ってかれてたし、二の腕くらい追加されたところで、代わりねーか…」

残った右手で頭を掻き、ジャラヒは苦笑顔を浮かべる。ダリアの返事を彼も待っているわけではない。
するりとダリアの横を抜け、もう彼は振り向かなかった。


男の名はジャラヒ・ワートン。
ダリアの相棒である。
多分。
恐らく、そうなのであろう。
多分、恐らく…というのは、ダリアにはその記憶がないからだ。
相棒なのだと言われ、そうかと頷いた。
記憶はないが、違和感はなかったから。
ダリアとジャラヒは、人を殺して旅をしている。
こちらはまだ記憶にあった。
殺し方だって忘れてはいない。
ダリアが暗殺者として生きていることも。
幼い頃に組織に拾われて、その技術をどうやって教えられたかも、はっきり覚えている。
殺した遺体に桜の花を置くことも、それを始めた最初の仕事も、まだちゃんと覚えていた。
忘れているのは、ジャラヒという男についてのあれこれと、あとはどうしてこの街にいるのかわからないくらい。この街での仕事は3件目で、2件目のときにこの街の滞在理由を忘れたらしい。これはジャラヒから聞いた。
どうでもいいことだ。問題ない。
目的を忘れてないなら、経過なんてどうでもいい。
目的を忘れたとしても、目的が遂げられるならそれでいい。
そのためのジャラヒだ。

と、ダリアは前を行くジャラヒに声をかけた。

「あとどれくらい?」
「今日の分は終わり。そろそろ足が付きそうだから、明日の早朝出よう。次の仕事は『車』に乗っていく。楽しみにしとけよ」
「…車ねえ、それこそ足が付きそうだけど」

『車』という移動手段は、最近とある財閥組織によって開発された、高速移動を可能にする箱である。
人が数人乗れる箱には輪が4つついており、その輪が高速回転することにより、それを可能にしているらしい。
馬車と違い生きた馬を必要とせず、輪は疲れも知らないので、長距離も移動可能だとか。
ダリアはもちろん乗ったことなどないし、その技術にも詳しくはないが、そう簡単に手に入るものではないことくらいは知っていた。
そんなものに乗れるのなんて、どこぞの財閥の御曹司か、金持ちくらいである。もちろん、身元不明の暗殺者なんて縁があるはずないのだが。

「大丈夫だよ。まかせとけって」

鼻唄でも歌いそうな陽気なジャラヒに、ダリアは言葉を失うしかない。
もしかしたら、ダリアが忘れてしまったコネのような何かを、彼は持っているのかもしれない。
左腕を無くして、片目を無くして、味覚もなくして、右足にはもう指もないのに、彼の目に絶望はない。
そうでないと、ダリアも困るのだけど。




***

車にはもう二度と乗らないと、ダリアは誓った。

「片目で運転なんてするもんじゃねえな…」
「死ぬかと思ったわ…」

運転をしたジャラヒの顔も青い。
高速回転する輪の上の箱…車は最悪だった。
上下前後に激しく揺れる様は、馬車など話にならない。
馬よりは確かに早いかもしれないが、その分乗り心地も酷い。馬なら変な煙も出さないし、変な臭いも出さない。
こんなものが目が飛び出るくらいの金額がするなんて信じられなかった。


「まあ、誰も轢かなくてよかったよな。誰か轢いておっ死んで、最悪おれのもう片方の目とか腕とか持ってかれたら、そのままおれたちもお陀仏だったかもなあ」
「笑い事じゃないわよ」

ひと睨みすると、ジャラヒはバツが悪そうに肩を竦めた。
乗ってみたかったんだよ、とブツブツ呟いて、車体から降りる。

「どうするのそれ」
「あー?置いてく。兄貴の会社からパクってきたやつだから大丈夫。どーせバレねーよ。
それに、こんなとこにこんなのがあったら、追っ手の目を集中させられるだろ?」

何がどう大丈夫かは知らないが、大丈夫というなら大丈夫なのだろう。
足がついて困るのはジャラヒも同じである。
それにしても、車なんて運転できるくらいの家の出なのに、なんでこの男は暗殺者なんてしているのだろう。
と思って、ダリアは頭を振った。
答えは分かりきっていた。
その方が、早く多くを殺せるからだ。





***

1人殺すと、1つ消える。
それがルールである。
消えるのは、ジャラヒの身体の何か、もしくはダリアの記憶の何か。
全てが消える前に目的を達することが出来れば、ダリアたちの勝ちだ。
誰と勝負を始めたのかは、ダリアはもう覚えていない。
目的さえ覚えていればそれでいい。
目的は、とある少女を救うこと。
ダリアとジャラヒが大切に思うあの女の子を救出するためなら、なんだってすると誓った。
あとどれくらいであの子は救われるのか。
何人殺せばいいのか、どれだけ失うのか。
尋ねてみても答える声は、ない。




○○○○



コートのポケットに、桃色がかった白い花が入っていた。
ゴミを溜め込んだつもりはなかったのだが。
ポケットに飴玉の1つでも入っていればよかったのだが、仕方ない。
今日のターゲットは子どもだ。少しだけ胸が痛まなくもないが、仕事は仕事だ。
飴玉はなかったので、ハンカチを取り出した。
子どもに声をかけ、目の前でハンカチを丸め、もったいぶってパッと開く。すると、ハンカチの中から花ビラが舞い、子どもはきゃっきゃと喜んでダリアに近づき、そして死んだ。

「ダリア」

静かに横たわる子どもを抱えるダリアに、声が掛かって振り向く。
ダリア、というのは名前だ。自分の。
男…ジャラヒがそう呼ぶのだから、そうなのだろう。
ジャラヒは足を引きずりながら、こちらに身を寄せ、抱えられた子どもに目をやり、一瞬目を伏せた。
それからジャラヒは静かな声で、「もう少しだ」と言った。
何がもう少しなのかは、もうダリアにはわからなかった。
彼が何を言っているのかわからない。
もう少しとは、何なのか。仕事なら今終わった。もう少しで追っ手が来るというのか?それなら急いでここから…
ジャラヒの顔を伺うと、焦っている様子はない。
ただ、静かだ。
その顔を見て、ダリアは大事なものを失ったことに気がついた。
これをずっとずっと恐れていたのだ。
わからない。
もう何もわからなかった。
何故ここにいるのか。
何をしているのか。
なんのために?
こんな小さな子どもを殺してまで?
仕事だから?
違う。違うことだけわかる。違うことしかわからなかった。
唐突に叫びたくなる。
叫ばなかったのは、ジャラヒがいたからだ。
ジャラヒは、動揺しているダリアに手を伸ばした。
…手を伸ばそうと、したのだろう。
頭を撫でようと視線を上げて、それから、自らに手がないことを思い出して、苦笑した。
ジャラヒにあるのは、指のない右脚と雑に造られた義足。それから心臓と左目のない頭。
いつも、ジャラヒはまだ残ってると笑うから、ダリアは気にしたことがなかった。
伸びて来ない手に、ジャラヒが失ったものに気づく。
それから、思い出せないその理由に、自らが失ったものに気がついた。
ジャラヒはそれでも、首を振った。

「大丈夫だって。もう少しだから。もうすぐ、あいつに会える。な?」

あいつが誰なのか、もうダリアにはわからない。
だけど、無性に逢いたいと思った。
ああ。
あの子に会うために、全てを失ったのだ。
そんなこと、あの子は望んでないけれど。




***

ジャラヒの言葉を聞いたのは、それが最後だった。
次のターゲットを殺したときに、声を持っていかれたからだ。
元々口数が多い方ではなかったが、完全になくなってしまうと落ち着かない。
ジャラヒは静かだ。
声が出せないからではない。
身体が動かせないからでもない。
粗末な義手も義足も、ジャラヒが動く度に、煩いほど軋む。
ジャラヒは次に殺すターゲットの名前を、器用に義手で書いて見せると、ダリアが見たのを確認して紙を燃やした。
彼は火の使い方が上手い。
まるで魔法みたいに、火薬を擦り火をつける。
器用な彼の特技の1つは、身体を失っても有効で、だからダリアも、ジャラヒが失ったものを意識せずにすんでいたのだけど。
ジャラヒの失ったもの。
ダリアのように、彼は記憶を失うことはない。
身体を失うのと、記憶を失うのと、どちらが良いかはわからない。
ただ、ジャラヒは確かに、身体以外の何かを失っていて、記憶が無くなっていくダリアには、それに気がつくことはとても難しい。

火に照らされたジャラヒの白い顔は人形みたいだとダリアは思う。
それから、馬鹿らしいと思った。
そうだ。
ジャラヒはもっと笑っていなければいけなかった。
こんな能面みたいに微笑む顔は違う。
声を失ったことに気がついても、彼は取り乱しもしなかった。少し面倒そうに眉を潜めて義手とペンを走らせて、持っていかれたと、紙とペンが勿体無いなと走り書いて、綺麗な顔で苦笑するだけだ。
いつもの静かな苦笑顔。
ダリアは、ジャラヒのその顔しか知らなかった。
だけど、これがジャラヒの本来ではないことも、記憶にはないが知っていた。
『あの子』といるときのジャラヒは、もっと笑って、怒って、泣いて、もっと不細工で、激しくて、ちゃんと生きてて、ダリアにとっては手のかかる弟のようで、そんな記憶、ダリアにはもうないけれど。

「また車乗りましょ。リオも連れて。あの子、速いの好きだから」

思い出せない記憶が口を突くと、ジャラヒはぎょっとした顔で顔を上げた。
目を丸くして、その碧の目が、だんだんと赤く染まって。
隠すように俯いたジャラヒは、何かを払うように首を振った後、大きく頷いた。




○○○○○
エイプリルフール話。
黒雫物語。
赤雫のもうひとつのIF話。



2017-04-01 : SS : コメント : 0 :
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キャンディちゃん

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