スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

赤雫物語サツヤ編2

赤雫☆激団。
一味が根城にしているのは、赤い屋根が特徴のこじんまりとした家。
一味6人のうち、期をめぐることに3人がこの家に滞在し、残りの3人は、別邸で寝泊りをすることになっている。
一応、朝昼夜のご飯時は、本邸のリビングに集合することにはなっていたが、6人がきちんと顔を合わせるのは夜ぐらいで、いつも各々マイペースに生活していた。
最初はサツヤも自分は一体どうすればいいのか途方にくれたものだったが、少したつとすぐ慣れた。
放っておいてくれるのはありがたい。
冷たい無関心とは違う、暖かな肯定だということは、サツヤにもわかっている。
歓迎の印にくれた指輪が、それをはっきりと教えてくれた。
放っているように見えながら、許容してくれている。
サツヤに宛がわれている部屋だって、本邸の方の一室で、隣の部屋はメイドのドロシーの部屋になっており、何かあると駆けつけてくれることになっていた。
とはいえ、部屋にこもるのもなんだか悪い気がして、なんとなく、サツヤは一味が顔を合わせるリビングルームに滞在することが多い。

だから、その日もサツヤはいつもどおり、リビングで紅茶をすすっていて。

「サーツヤくん!あーそびーましょ~!」
「え、あ、うん」

少女の明るい笑顔に、面食らっていた。

「えっと、リオちゃん、そんな大きな声出さなくても、聞こえるよ、近いし」

リビングにある6人がけのテーブル。台所に一番近い奥の席がドロシーの席。その横がダリアで、続いてロイ。
ロイの前がリオの席で、その隣がジャラヒ、そして隣のドロシーと向かい合わせの席がサツヤ。
今、リオは、サツヤの2つ隣の低位置に座っていた。
間のジャラヒは今は外出中。よって、誰も挟んでいないほぼ隣の席で、リオは元気よく手を振っていた。隣の部屋でも聞こえるくらい、大きな声で。

「サツヤくん。お誘いの作法なのよ?」
「そ、そう」

よくわからないが、彼女の作法なら仕方ないと納得するしかない。

リオディーラ。
10代前半の女の子。
なぜこんな幼い子がこの部隊に…と尋ねたら、彼女はジャラヒとロイの娘みたいなものだと、ダリアが教えてくれた。
ちょっと一瞬本気で触れないほうがいい関係なのかと思ったが、それを聞いていたロイが必死で訂正してくれたところによると、彼女は、この部隊を立ち上げた「リオディーラ」というリーダーの忘れ形見みたいなもので、ロイの魔力とジャラヒの世話で、ここまで育てたらしい。
聞いてもあまりよくわからなかったが、とにかく。
彼女は、この部隊の中で、特別可愛がられていることはわかった。
ジャラヒは、いつもはすました顔をしているが、リオのことになると、ハンカチ持ったか?忘れ物はないか?夕方までには帰って来いとか、母親みたいに口うるさい。ロイはあまり何も言わないが、リオが困った顔をしていると、一番最初にやってくるのは彼だ。
ダリアだって、リオとお人形遊びをやっているみたいだし、ドロシーは…みんなに同じように優しいけれど、リオのような子どもの扱いは、一番上手いようだった。

「あのね!あのね!おままごとしたいの!」

子どもとはいえ、あまりにも幼いその提案。
思わずきょとんとしてしまったが、にこにこと期待に満ち溢れて顔を輝かせているリオを見ると、サツヤも思わず笑ってしまう。

「いいよ。でも二人じゃ少なくないかな?」
「だいじょーぶ!みんなでやろーね!サツヤくんは、王さまね!」
「お、王様??」

突然思っても見なかった配役を与えられた。

「それでね!ドロシーちゃんがお后さまなのね!」
「へえ」
「ロイくんが魔王!」
「魔王」
「ダリアちゃんが魔女で~」
「魔女」
「でねでね!ジャラが王子さまなの!」
「??金髪だからかな…」

発表された配役は、どうやらファンタジーものらしい。
魔王やら魔女にされたロイやダリアには申し訳ないが、不思議と納得してしまった。ジャラヒが王子というのは疑問が残るが、確かに金髪といい、碧の目といい、いわゆる絵本の王子様然としていなくもない、ような気がしなくもなくもない。と、無理やり納得しておく。

「リオちゃんは?」

肝心の本人を問うと、リオはそこで、少し照れたように顔に手をやった。

「ワタシはね…おひめさま!」
「あ、可愛い。似合うよ。うん」

やっぱり女の子はお姫様だ。
おままごとでお姫様。とても可愛らしくてほほえましい。
これが男の子だったら、ヒーローごっこだろうか。
と、サツヤはふと幼い頃のことを思い出した。
サツヤがリオよりずっとずっと小さなころのこと。
幼稚園児の頃だ。
あの頃は、サツヤにだって、おままごとをする友人がいた。
サツヤはいつもすぐにやられる怪人役か、人質の役ばかり。
幼馴染である友人は、いつもなぜか悪の科学者役をやりたがって、兄がヒーロー役をやるのがいつもの配役だった。

(兄さんが、いつも、見たことないような必殺技、みせてくれたんだっけ)

毎回違った必殺技で怪人を倒す兄は、あの頃からサツヤの憧れだった。
悪の科学者役の幼馴染と、今のはどうやったのかと兄に詰め寄ったものだった。

(なつかしいな)


「じゃー、王さま!よろしくおねがいします!」
「あ、うん。よ、よろしく…」
「王様っぽく!」
「え、…こほん。よろしくたのむ、よ?」

応えたサツヤに、リオは少し不満げに何かを考えていたが、仕方ないと及第点をだしたのだろう。こくんと頷いて、サツヤの手を取った。

「王さま!お散歩ね!」




手を引かれて連れて行かれた先は、赤雫☆激団の裏庭。
日当たりのいい裏庭は、小さな野菜農園にもなっていて、地面から野菜の葉が姿を見せている。
そして、そののどかな農園の先に。

「魔王!」

のどかでない敬称をつけられた男が、剣を振るっていた。

「ん、ああ、リオか。サツヤも……て、魔王?」

剣を振る手を止めて、汗を拭いながら、一歩贈れてロイは首を傾げる。
それから、サツヤが王さまで、自分がお姫様なのだとリオが胸を張ると、ああ、と頷いて。

「えっと、おれが魔王役か。難しいな…イケニエでも要求すればいいのかな?」
「ドロシーちゃんが、晩御飯は焼肉だって言ってたよ!」
「なんてことだ。もう用意されていたとは…姫よ、その情報でこの魔王に何をさせたいと言うんだ」
「えっとね。ジャラどこにいるか知ってる?」
「うーんどうでもいいから知らないなあ。ドロシー…は買い物だっけ。そうだな、ダリアなら知ってるんじゃないか?」
「はーい!ありがとね!」
「ああ。サツヤをあまり困らせないようにな」

はーいともう一度元気よく返事をして、くるりと振り返ったリオは、拳を突き出した。

「魔王やっつけたー!」
「え?あ、うん。えっと、偉いね」

素振りを続けるロイにさよならを言って、リオはまた室内に入る。
そのまま洗面所で手洗いうがいをしたあと、タオルで拭きながら、サツヤにも綺麗なタオルを差し出した。
ありがとうと言って、サツヤもそれに倣う。
外から帰ってきたら手洗いうがいは重要だ。なんて、誰かがリオにしっかり教えたのだろう。それをリオは疑いもないようで、めんどくさがる素振りも見せなかった。

(いい子だな…)

少々幼いが、素直でいい子だ。
ここに来たばかりの新入りのサツヤにも、こうして遊びに誘ってくれる。きっと、いつも彼女はこうなのだろう。
みんなに愛され、いつもにこにこと幸せに過ごしている女の子。
サツヤだって、手を引かれていると、いつの間にか笑っている。
不思議な少女だ。




「だーちゃん!あそびましょー!」

ダリアの部屋の前で、リオは先ほどサツヤに呼びかけたのと同じように、朗らかに声をあげた。
ちょっと待って、という声のあと、扉が引かれる。

「リオ?どうしたの…あら、サツヤも」

黒い髪を伸ばした女性。冷ややかな眼差しは、初めて見たときから、サツヤを萎縮させる。
今も、ふっと投げられた視線に、ひやりとして、思わずびくりと体を振るわせたのだけど。

「何して遊ぶの?ごめんなさいねリオ、私、もう少ししたら出かけるのだけど…」
「おままごと!だーちゃんは魔女よ?」
「魔女、えっと」

配役を告げられたダリアは、困ったように眉を寄せる。

「出来るかしら、変身…。マジカルウィッチ・ブラックブロッサムに…」
「え、魔女っこ路線??」
「だーちゃんなら大丈夫だよ!最強の優しい魔女だもの!」
「そう、ありがとう」

思わず疑問符を浮かべたサツヤの声は聞こえなかったのだろう。ダリアは優しく微笑んでいる。
リオの配役を尋ね、お姫様と聞くと、ぴったりだわと頷く。それから、ダリアは鏡台の引き出しにごそごそと手を伸ばした後、目当てのものを見つけたのか、満足げに頷いて、優しい微笑みを浮かべながら、ダリアはリオの顔と向き合えるように腰を下ろした。

「少しじっとしてて」

ダリアはリオの頭に手を伸ばすと、器用にその髪に、リボンを飾り付ける。
髪を二つに分けて、先に縛った赤いリボン。
きょとんとしたリオに、にこりと笑って
「お姫様はかわいくしなくちゃ」
と、彼女の頭を撫でた。
リオはというと、そうっと恐る恐る頭に手をやり、いつもと違う頭の様子に不思議そうにした後、リボンに触って、それからまるで壊れ物にでも触ってしまったかのように手を離し、背筋をピンと伸ばした。

「だーちゃんすごい!さすが魔女ね!!」
「お姫様にだけ効く魔法よ」
「すごい!!」

目をきらきら輝かせて、くるりと回って、大きく飛び跳ねて。
体全体で喜ぶリオに、なんだか見ているサツヤまで嬉しくなってくる。

「よかったね。リオちゃん」
「うん!あのね、にあう?」
「うん。似合うよ。かわいい。お姫様みたいだ」

その返答に、赤くした顔に両手をやって、もじもじ照れ照れし、それから、ぱっと顔をあげた。

「王子さま!」
「??」
「み、見せにいくの!!」

王子様、と言われて一瞬考えてしまった。
おままごとをしているのだということと、彼女が言っていた配役を思い出して、ようやく思い当たる。

「ジャラヒなら出かけたけど、どうせ商店街にいるんじゃない?ドロシーがお米買いに行ってるって聞いて出て行ったから」

配役を聞いてないはずのダリアが、なぜかそれを言い当てた。
ジャラヒの名前なんて出してもいないのに、王子がジャラヒなんて、どうして出てきたのか。
もしかしたら彼女は本当に魔女なのかもしれない。

「リオのための王子なんて、アイツ以外誰がいるのよ。ねえ?」

まるでサツヤの心を読んだかのような返しで、ダリアが同意を求めると、リオは、ん、と頷いて、ねえ~!とニッコリ笑った。




さて。

「ぷりんーぷりんーぷりんせすー♪」

歌うリオと手をつないで、サツヤは商店街へと足を向けている。
先日財布を取られた教訓もあり、ポケットの財布にはチェーンもつけている。
はぐれないように、リオの手もぎゅっと握って。

「ぷりんはつよーい♪おひめさまー♪」
「わ、ま、待ってよリオちゃん」

リオに振り回されていた。

スキップしながらあっちへふらふらこっちへふらふら。
それにつられて、サツヤもふらつく。
それでもリオが本当に楽しそうなので、サツヤは悪い気はしなかった。
悪い気はしないどころか、申し訳ないくらい楽しく思っている。
兄も探さず、こんなところで楽しくしていて、いいのかなって罪悪感が胸をよぎるくらい。

(一体、兄さんは、どうしてるんだろう)


「サツヤくん!だいじょうぶだよ!」
「え?」
「ワタシね、ジャラのいるとこ、すぐわかるもん!」
「そ、そうなんだ。すごいね」
「だからね、サツヤくんもね、だいじょうぶ」

大丈夫と繰り返し言って、握った手をそのままに、リオは飛び跳ねる。

「だいすきな人のことは、どこにいたって、すぐわかるのよ」

絶対の掟なのだと。
当然のごとく笑って、顔を上げたリオは、ただ一点を指差した。

「ほら」




「・・・あ?なにやってんだよ」

指した先には青い空と、太陽の光を金に反射させて、かの人が、メイドを連れて立っていた。
ダリアが言っていたように、買い物の帰りなのだろう。市場の方からやってきたジャラヒは、重そうな包みを抱えている。その斜め後ろにいるドロシーは、少し申し訳なさそうにジャラヒを気にしていた。
荷物を抱えなおして、ジャラヒはリオに目線を合わせた。しゃがんで、首をかしげる。
彼に駆け寄ったリオは、ふふふと笑って、ジャラヒの手に自らの小さな手のひらを合わせて、それからその手を持ち上げた。

「つーかまーえた!」
「おにごっこ?」
「おままごとよ?」

まさか、自分が王子様役を割り当てられただなんて思いもよらないだろう。
合わせた手を握って、ジャラヒは首をかしげながら立ち上がった。・・・リオが警察で、おれが盗賊かなんかか・・・などと呟きながら、「捕まる前にお前をさらってやるー」「いいよー」などとやっている。
噛み合ってない様子が愉快で、サツヤも口の中で笑いながら、その後ろで優しく微笑んでいるドロシーを見た。
彼女も脇に荷物を抱えている。

「おままごとですか?」
「うん、ドロシーはお后さまだって」
「あらまあ」
「僕は王様らしくて・・・あ、ジャラヒさんは王子様」
「リオちゃんはお姫様ですか?」
「そうそう。よくわかったね」

長年一緒にいる彼らには、リオの配役は当然らしい。

「リオちゃんは、ジャラヒぼっちゃんが大好きですから」
「ああ・・・」

そこまで言われて、サツヤはようやく察した。
これはきっと、彼女にとっては、ただのおままごとじゃないのだ。
小さな彼女の、小さくて淡いもの。
サツヤには、そんな甘い気持ち、めぐり合えたこともないので、察することしかできないけれど。

「リオちゃん」

リオは、にこにこと笑い跳ねながら、ジャラヒの手を振り回していた。
一生懸命、頭をふりふりしているが、彼女の目的は遂げられてはいない。
王様には、お姫様に手助けをしなければいけないという役目があるのだった。
こほんと咳をして、ちらりとジャラヒを見る。
それだけで、ジャラヒが気がつくわけもなく・・・
サツヤも、こういった手助けが上手いわけもないのだけれど。

「今日のリオちゃん、とっても可愛いね」

わざとらしくそう言うと、リオはきょとんとしていたけれど。
隣の男はようやくそれに気がついたようで。
苦そうな顔をしながら、リオの髪についたリボンをそっと掬って。

「あー・・・リオ、ダリアにやってもらったのか?それ。似合うぞ」
「ふふふ。お姫様なのよ!」
「おー」

頭を撫でると、機嫌を良くしたリオに、ほっとしたように息をつく。
それからジャラヒはサツヤに目をやって、バツが悪そうな顔をしながら、負け惜しみのように言った。

「でも、今日のじゃなくて、リオはいつも可愛いんだよ。なー?」
「お姫様だから!」
「お姫様だもんなー」

そうリオに笑うもんだから、リオの機嫌は良くなるばかりだ。
少しやりすぎな感もあるが、リオが喜んでいるので良しとしよう。喜ばせすぎたことに、ちょっとだけ申し訳なさを感じるが。
リオは、ジャラヒの手を取り、うきうきと、スキップするように、元来た道をジャラヒに示す。
ジャラヒは、おうと頷いて、もう一度荷物を抱えなおしながら、ゆっくりと、リオに歩調を合わせた。

(よかった、のかな)

この部隊に入って間もないサツヤだって、リオの笑顔のためならと、絶えずあの子を気にしている一同の気持ちが、わかるようになっていた。
彼女が笑顔で、にこにこと、元気でいるのが、一番いい。
将来、彼女はもしかしたら、痛みを覚えるのかもしれないけれど。
それは今ではないもっとあとのこと。杞憂に限りなく近いただの心配だ。

「さすがですね、サツヤさん」
「え?」
「『今日の』って、わざとでしょう。ぼっちゃんがああ言えるように、隙を作って」
「え、えっと」

ぽつりと言ったドロシーに、サツヤは頷けなかった。
杞憂だと思えど、少しだけ残るしこり。
そう言われても、戸惑う他ない。
さすがと言われても、ばつの悪い思いが胸を締める。
だから、サツヤは曖昧に誤魔化して、リオたちの後に足を向ける。

「あ、ドロシーさん、行こうよ。晩御飯、作るんだよね。僕も手伝うよ」

ドロシーも頷いたのだろう。もう何も言わずに、足音だけがサツヤの後ろから聞こえてきた。

関連記事
スポンサーサイト
2016-09-03 : SS : コメント : 0 :
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »

プロフィール

赤雫☆激団

Author:赤雫☆激団
英雄クロニクル サクセスサーバー
オーラム国の赤雫☆激団です

カテゴリー

タグリスト

最新コメント

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。