スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
-------- : スポンサー広告 :
Pagetop

くりすますですばとる

「それでねそれでね。真っ赤な鼻のおじさんが、煙突からじーっと見つめて、その子の行いに見合ったものを、枕元にそっと置いて消えるんだって!でね、おじさんの姿を見た子は呪われるらしいよ!」
「へー」
「悪のにおいがするよね!」
「おれにはホラーのにおいしかしない」

目を輝かせている少女は、赤雫☆激団リーダー、リオディーラ。
その話を聞き流しているのは、彼女の保護者ジャラヒ・ワートン。
つい先ほどまで寒空に負けずに庭で飛び跳ねていたリオは、寒さに負けまくって部屋で布団にくるまっているジャラヒに、とっておきの話と持ちかけたのがそれだった。
いつも元気印のリオディーラがそうやって持ってくる話は、彼女の仕入れてきた、彼女いわく、悪が匂いのする話。つまりは彼女のヒーロー心を思う存分満たすことが出来るヒロイックストーリーの種。尚、ヒーローは彼女がこれから変身する予定。
それを聞くジャラヒは、流したり巻き込まれたり話をそらしたりするのが常だ。
今回も、もちろん流すか話をそらす予定。

「リオ、怪談話は夏にしよう。今は冬だぞ。寒い。布団が呼んでいる」
「怖い話じゃないよー。悪の話!」
「不法侵入は悪っぽいが、・・・そのおっさんは枕元にそっと呪いの品を置くんだろ?何それ怖い」
「ジャラの怖がり!呪いの品じゃないよー。見たら呪われるだけ!」
「どっちも同じだ」

怖がりで結構。慎重派と呼んで欲しい。
現時点では、もちろん怖さより面倒くささと布団からのラブコールを受け止める気持ちの大勝利だが、もともと怪談を好む性質ではない。
信じているわけではないが、怪談が噂される場所なんて、怪談の真実はなんにせよ、厄介ごとが埋まっていると決まっているのだ。
廃墟の幽霊の正体は、廃墟を隠れ蓑にするヤンキーと相場は決まっているが、どっちにしろ近づくと面倒でしかない。組織にも属さない下っ端と関わってもいいことがない。そっとしておきたい。

「呪いだよ?悪いことだよ~やっつけよー!ばーんしよう!」
「ばーんしません。ほんとに呪いか?煙突好きなさびしいおっさんが、子どもを見たくて覗き込んでるだけかもしれないだろ。シャイだから見つかりたくないんだよ。呪いなんて疑ったら可哀想だぞ」
「うう、・・・呪いじゃない・・・呪ってくれないとばーんできない・・・」

さすがに呪いなんて非科学的だと気づいたのか、リオの勢いが少し弱まる。
実際、呪いなんかより煙突から不法侵入して覗き込んでるほうがよっぽどの悪だと思うが、リオはそこには気づかないのか、うんうん唸って、ジャラヒもそれを指摘するつもりなんてなかった。

「だろ?よし、リオ。布団に包まって寝ようぜ。おれが本でも読んでやろう。な?リオが好きそうな話、こないだダリアが買ってきてた・・・」
「わかったよ!ジャラ!」
「うん、寝るときはちょっとテンション落とせな?」
「ワタシ、寝る!」
「おう。こっち来い。あったかいぞ」

少し端によけ、リオ一人分のスペースを開ける。
手招きするジャラヒに、リオはにこりと答えた。

「そーと決まったら行かなきゃ!」
「は?えっと、行く?」
「うん!会いに行ってくるよ!」
「え?寝るんじゃねえの?」
「寝るよ!当たり前だよ!じゃあ、行ってくるね、ジャラ!」
「は?どこに??えっと、会うって誰と・・・」
「サンタと!じゃあね、ジャラ。おやすみ~~!」


「さんた・・・?」


突然出た見知らぬ男の名前。
閉じられた扉をしばらく見つめて。それからあわてて、捲られて冷たくなった布団を剥ぎ除けた。

「べ、別にそろそろ外に出ようと思ってただけだし」

誰も聞いていない言い訳を口の中で交わしつつ、コートを被り、ドアを蹴り開けて舌打ちひとつ。

「サンタって誰だ!」

叫ぶその問いに、返ってくる答えはなかった。






@@@@@
赤き雨、というのは、ジャラヒ・ワートンの二つ名である。
かつて、とあるスラム街の悪名高いギャングどもと闘争になった彼は、単身で組織に乗り込み、廃墟に銃声が嵐のように鳴った後、残ったのは、まるで雨のように濡れた赤い血と、その中で一人だけ佇んでいた男、ジャラヒ・ワートンだけだったという。
赤い血を纏わせた彼には傷ひとつなく、ただ赤く濡れた体を乱暴に拭い、様子を見に来た仲間たちに後始末を頼み、以来、そのスラムは、ジャラヒのホームとなった。
彼の二つ名はそのときのものであり、その組織がなくなって、このブリアティルトに来てからは、過去のものでしかなかった二つ名だが。

その時の死体を見下ろしたのと同じ顔で、低くジャラヒは呟いた。

「サンタ・・・お前の服を染めてやる。綺麗な赤にな」

サンタの服がすでに赤いことを知らないジャラヒの決意は、彼の肩に留まっていた小鳥をぎょっと飛び立たせ、近所の犬は一度吠えたあときゅんと鳴いてどこかに消えた。
それにひと目もくれず、彼が見るのはただ一つだ。
ジャラヒの目線の先には、スキップして陽気に鼻歌をうたっている少女。もちろんリオだが、彼女に声をかけるつもりはなかった。

(お前か、お前がサンタなのか)

付かず離れずの距離で、彼女が明るく手を振る方々を睨み付ける。

(今なら目でヤれる気がする)

人見知りをしないリオは、行きかう人々のほとんどに手を振り、陽気な挨拶をかけているが、声をかけられたほうは、何故か火傷をして飛び跳ねたり、逆に寒さに震えたり転んだりしている。
無自覚に信じたことが現実になるという彼の力の一端の成果ではあるが、無自覚でないと使えないので偶然ということだとジャラヒは信じた。

あいつがサンタか、こいつがサンタかと、目を走らせているが、リオは声をかけるものの、一向に足を止める気配はない。

(・・・どこに行く気だ?)

リオは、サンタに会いに行くと言っていた。
サンタと。
サンタと寝に行くのだと。

(絶対にころす・・・じゃない。と、言うことはだ)

あくまでも冷静に、ジャラヒは考える。
寝るってなんだとか。
おれじゃだめなのかとか。
なんでそんな男なのかとか。
ころすとか。
どこで出会ったんだとか。
ころすとか。
もしやその男とそんなに仲良くやってるのかとか。
I kill Santaとか
まさかそんなことまでやっているのかとか。
go to hellとか考えて、

(サンタの家、か・・・)

もしや、家にいるのではと、冷静に結論をつけた。

「ダイナマイト持ってくればよかった、か」

「って何物騒なこと言ってるの?!」



冷静につけた結論に文句をつけられて、ジャラヒはふらりと振り返った。

「ああん?」
「わああああすみませんごめんなさいジャラヒ!!いや、ジャラヒさんごめんなさい。ジャンプします!ジャンプします!ほら、じゃらじゃらちゃりんちゃりんいわないですから、お金は持ってないです!!!」
「なんだ、サツヤか」

突然泣き出して後ずさったのは、赤雫☆激団の目立たない仲間、緋月サツヤだ。
地味で目立たないが、優しく芯の太い、勇気のある少年で、ジャラヒもあまり口には出さないが、一目置いている。
その勇気のある少年は、ぴょんぴょん飛び跳ねたあと、土下座スタイルでジャラヒの足に頭をつけていた。

「何してんだ?」
「いや、それは僕の台詞だけど、とりあえず靴でも舐めたら許してもらえるかなって」
「そんなの舐めたら汚えだろ。ったく」

肩をすくめるジャラヒに、怒っていないとようやく安心したのか、サツヤはそろりと立ち上がって、えっと、と言葉を濁したあと、もう一度首をかしげた。

「草木が死んでたのと、あっちで目つきの悪いヤンキーみたいな人が、世界を滅ぼしに行ったけど英雄さんに3分でやられそうな顔で練り歩いてるって聞いたから、もしかしてジャラヒかもって・・・」
「そこでもしかしてって思うのはおかしいだろ。おれは目つき悪くねえし、どっちかっていうと上品な顔してると思うぜ」
「自分で言う」
「スラムでも、凄みが足りなくて嘗められるのが悩みだったから・・・おれ、貴族出身の王子様みたいな顔してるのが悪いよな・・・実際それに近いもんあるし」
「自分で言うことじゃないし、たぶん、カリスマとかそういうのが足りなくて、チンピラみたいに見えるから嘗められてたんじゃないかな」
「うわ、なぜだかおれ、今なら触れてないのに人を燃やせる気がする」
「あ、ちょ、待って。熱い熱い熱い!ごめん!ごめんって!凄みあるよ!すごくある!!」

なぜだか発火しそうになっているサツヤが、何故だか謝っているのを受け入れる。
そんなことをしている場合ではないのだ。
今は、地味な少年に関わっているところではない。


「無駄な時間を過ごしてしまった」
「それは僕が言いたい・・・」

そうだ、今はそれどころではない。
必ずサンタをころす。いや、死どころでは贖えないその罪を地獄の劫火で燃やし、転生の存在しない魔界の最奥の階層の煉獄で永遠に滅びすら許されないこの世の・・・

「おーい、ジャラヒ。帰ってきて」
「爪を剥ぐからスタートするか、目玉に針を刺すからスタートするか、どっちがいい?」
「どっちも嫌だよ。もう。結局何やってるのさ・・・」

サツヤから満足に解答を得られなかったので、諦めて周囲を見渡す。
と、見失ったかと思ったが、どうやらリオは思った以上に寄り道をしていたらしい。離れてはいるものの、視界の端に、元気に飛び跳ねる彼女が見える。
一体どこに向かっているのか。
そう頭の中で何度目かの問いをして、それからすぐに気が付いた。
この先にあるのは・・・

「あんなところに、サンタが・・・?」
「サンタ?」

サンタとリオの逢引の場所は、この先ならばひとつしかない。
ぽつりと呟いた憎い男の名前を、隣で聞いていたサツヤが反芻する。
それからサツヤは、ぽんと手を打った。

「ああ、リオちゃん。なるほど、あそこならサンタもいそうな気配あるよね」
「!!知ってるのか!?」

サンタ。
ジャラヒ内ブリアティルトころすころす選手権第一位の男の名を、サツヤは朗らかに言って。

「リオちゃん、会いたいって言ってたもんなあ。あそこの廃工房なら、使ってないけど煙突もあるもんね」
「共犯、宣言、だと…」

まさかの身内からの裏切り。
サツヤの発言は、まさしく、敵――サンタの存在を許容し、尚且つ、リオとその男の仲を取り持ったとも言える発言だった。

「そうか・・・裏切り。ああ、わかってたんだ。気を許すもんじゃないって。おれは裏切りの味を知っていた。知っていたのに、この生ぬるい生活の中で、浮かれてそれを忘れたことにしていた・・・」
「ジャラヒ?」
「ああ、大丈夫さ。初めてのことじゃない。裏切りには慣れている。だから、痛くもねえよ・・・大丈夫だ」
「えーっと」
「思い出させてくれてサンキュと、感謝しないといけないよな」

信頼していた少年の裏切り。
ナイフを背中から突き立てられるより痛い。
切っ先は鈍く、熱く、簡単に切り捨ててはくれない。
信頼という名の熱は、熱く絡みつき、包んで、その痛みから逃がしてはくれないのだ。
ジャラヒは、この世界に来る前。
リオに会うまでは、そのことを知っていた。
信頼という熱は、鎖を強固にしてくれるが、反して痛みから逃げられないように苦しめる。
だから、最後は裏切られてもいいように生きてきた。
リオに会ってからは、その幸せのぬるさに、忘れてしまっていたけれど。

「悲しいが、サツヤ。おれはお前をここで・・・」
「ジャラヒ。サンタというのは、架空の人物で、トナカイにのってプレゼントを配るおじいさんのことだよ」
「ここで殺・・・って、え?」
「サンタというのは、リオちゃんの逢引相手でもなんでもなくて、煙突から家に入って、寝ている子にプレゼントを配るっていうおじいさんのことだよ。僕の世界で有名なおとぎ話」
「え、あ、はい。あ。そ、そうなんだ。あ、わかった。あー・・・あのホラーのやつな」

聡明なサツヤが、一瞬にして事態を把握したため、かくして、ジャラヒの計画するぜったいにころすころすころしてヘブンに連れて行く事件は発生することもなく、急速に終焉を迎えた。

廃工房のえんとつの横で、待ちくたびれて眠っていたリオを背負って家に帰ったジャラヒは、とりあえず枕元に、プリンと絵本を置いておいた。
それだけだとサンタに負けたら癪なので、ちょっとためらった後、彼女にそっと、口付けもそえて。
関連記事
スポンサーサイト
2015-12-25 : SS : コメント : 0 :
Pagetop
コメントの投稿
非公開コメント

Pagetop
« next  ホーム  prev »

プロフィール

赤雫☆激団

Author:赤雫☆激団
英雄クロニクル サクセスサーバー
オーラム国の赤雫☆激団です

カテゴリー

タグリスト

最新コメント

検索フォーム

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード

QR
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。