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12期エピローグ

夜になっても、ジェインもヒューイも帰ってこなかった。

「…遅いね」

ぽつりとリオが呟く。
独り言のように。
実際、家にはリオとソウヤしかいなかった。
もしかしたらソウヤに話しかけたのかもしれないけど――ソウヤは、独り言だと思うことにした。
そう思わないと、どこか罪悪感のような、重い気持ちが口を湧いて出るのを止められそうになかったからだ。

(だって、たぶん、あいつらは帰ってこない)
知ってたわけではない。
と胸の中で言い訳する。
気が付いたのは先ほどだ。
999年。その年の瀬。
巡りがそろそろ終わる。
門が活発化を始め、新しい3年を繰り返す準備に入る。
ジェインは。
それから、ヒューイは。

(たぶん、元の世界に帰る)

ソウヤが知っているのは、ジャラヒの母と父が、ブリアティルトからジャラヒの世界に落ち、そこで暮らしたということ。
ジャラヒが生まれてしばらくして、ジェインが死ぬということ。

(それを知ってて)

知ってて、ソウヤは気を付けなかった。警告もしなかった。
こんな時期に敢えて二人にしたのは、見捨てたと言っても過言ではないかもしれない。
そんな罪悪感と、それでもその出来事がない限り、ジャラヒが産まれないのだという言い訳とを感じながら、リオの斜め前に座ったソウヤは、頬杖をつきながら、曖昧に頷いた。

「まあ、二人ともいい大人だしね」
「でも、そろそろ一巡りするもの。ワタシ、二人には幸せになってもらいたい」
「……ん?」

返ってきたリオの言葉に、違和感を覚える。

「ジェインには、巡りに捕らわれてほしくないの。幸せになって、欲しい」

幸せになってほしいと、何度も繰り返して。

「きっと、巡りから外れたらいいのかなって」

なんて、自分がまるで変なことなんて何も言ってないみたいに、普通にソウヤに尋ねるもんだから。

きょとんとして、ソウヤはごくりと唾をのんだ。

「巡りって、リオ…」
「どうしたの?ソウヤくん」

巡り。
その概念は、傭兵の半数が知っている概念。
ブリアティルトが3年をくるくると繰り返していることを、知っているものは多い。
だけど、巡りの外からここに紛れ込んだはずのリオや、ジェインや、ヒューイは、それを知るはずはなかった。
知るはずがないと、ソウヤは思っていた。

「ソウヤくんも、ぐるぐる回っているんでしょ?大変だよね…」

うんうんと頷いて。

「ジェインがね、家を出て、アティルトに来たら、せんそーに参加したら、巡りに巻き込まれちゃうからね、ワタシもついてきたの」

そんなことを、別に問題なんてないみたいに言って。

「ねーソウヤくん。巡りから外れるのと、ぐるぐる回り続けるのと、ジェインにはどっちがいいのかなー」

テーブルの上で、手を遊ばせながら、八の字眉で悩んでいる。
それは普段のリオの態度と全く変わらなくて。
ソウヤは、自分の方がおかしいみたいだと思った。

「だって、戦争にずっと巻き込まれちゃうんだよ?巡りの存在に気づかない限り、ずっとヒューイのことも忘れちゃうし、せっかくジェラるん生まれたのに、それもなかったことになっちゃうし、ずっとずっとずっと終わらない戦争するのも可哀想だよねえ!」

リオは友人の身を本気で案じているのだ。
それはわかる。だけど、その案じ方が余りにもソウヤの考えを超えていて――

「…可哀想だったら、どうするの?」
「もちろん!ばーんっと、超えちゃうよ!」
「…?巡りを??」
「やだなー。そんなことワタシに出来るわけないよお。んーちょっとね、こう、門を開いて、脱出してもらうの」
「門…?」
「うん、聖域は怖いし、危ないから…聖域じゃないとこでちょっとだけ…うん。ジェインたちくらいなら通れるよ」

にこりと笑って。

リオは、それをした。

そして、よしっとリオは呟いて、ぽんと手を叩く。
この時期、干渉しやすくなっている黄金の門を、ちょっと開いて閉じた。
今のほんの一瞬の間に彼女がやったことがソウヤにもわかった。
そして、それが彼女の力なのだと。

(これだ)

いや、これ、なのだろうか。
ソウヤの求めている力に、似ていた。
おそらくこれが、彼女が幼いころから狙われていた理由。キャスケル家が見つけ出し、切り札にしていた≪ディーラ≫と呼ばれる力。
黄金の門に干渉することができる幾つかの力のうちの一つ、と伝承には記されている、とヒューイが言っていたものか、とソウヤは幾つかの情報を頭の中で纏めて、ぐっと拳を握った。
たった今、ジェインとヒューイとドロシーに赤ん坊が、門を通って消えたのだと、わかってなお、彼らの心配より何より、ソウヤは、今突きつけられた事実に、そっと、壊れないように触れていく。

「…リオのその力は、他の世界から、この世界に、人を呼ぶことも、出来る?」

どくどくと、心臓が鳴った。
ずっと、願っていたことだ。
ソウヤは、リオにそれを頼むため、赤雫☆激団に近づいた。
ジャラヒの妄想から生まれた不思議な女の子。
彼女は不思議な力を持っていて、『人の願いをかなえることができる』。
あの時、リオに頼んだときは、それが為される前に彼女は消えてしまって。もう、リオの力を頼らずに、自分でする他はないと思っていたのだけど。
まさか、オリジナルのリオにもそんなものがあるとは知らなかった。
このリオは『願い事をかなえる』ではなくて、門に干渉する力を持っている、らしいけれど、ソウヤにとっては似たようなものだ。

対するリオの答えは、あのときのリオと同じもので。

「んー、ワタシと繋がりがないと無理なの」
「つながり?」
「昔逢って仲良くしてたとか、そういうの。知ってる子じゃないと門をくぐらせられないんだあ」

ごめんね、と謝るリオは、本当に申し訳なさそうに頭を下げている。
以前、ソウヤはそれを聞いて引き下がって、リオはそれでも、ほかの手段探してみる!と張り切ってくれていたのだった。
だけど、今度のソウヤには、引き下がる気はない。

「俺を媒介にする、とかじゃ無理なのか?リオの力だけ借りて、あとは俺がどうにかするとか、そういうのは…」
「ソウヤくん」

ソウヤの言葉を、リオは途中で遮った。
遮って、じっと、その顔を見る。

「…無理かな?」
「ソウヤくん」
「出来るだろ?」

じっと見つめて、名前を呼ぶリオの顔を、ソウヤの方がまともに見るのも難しい。
彼女の目は、まっすぐでつらい。

「…他に方法、ないからさ」

ここでリオに断られると、先はない。
もう長くブリアティルトにいるが、もうそろそろ限界だった。
3年の巡りを、もう何回繰り返したのか。
心も体も、もう全てを投げ出したがっていた。
単純に、異界を超える方法は、他にもある。
ロイに頼めばいい。実際、前にリオに頼んだときは、ロイならなんとかしてくれると、リオも言っていたのだけど。
それでは駄目なのだ。
彼の力では、連れてくることは出来ない。

「頼むよリオ」

黄金の門を使って、アイツはここに来なければならない。
アイツは、ソウヤが黄金の国にいることを知っている。知っていて、逢いたいと思っている。逢いたいと思っているから、全てが駄目になっているのだ。
逢う手段はひとつ。きちんと、童話通りに、黄金の門を通って来ないと、アイツはここに来ることができない。

だから。

「ソウヤくんは、すごいね」

拝むように頼むソウヤに、ぽつりとリオは言った。

「うん。なんか…うん」
「?」
「ワタシね、ずっと怖かったの。夢を見て……」

怖い怖い夢の話。
ひとりぼっちになる夢の話だとリオは言った。

「自由になりたくて。でも、自由はひとりぼっちだから、怖いの。王子様が助けに来てくれるんだけど、ワタシを助けようとして、消えちゃうの。最後には、自由も消えちゃって、またどこにも行けないの」

ただの独り言を諳んじて、リオは返事なんて求めてないように、首を振った。

「ワタシね、巡りを回ってる人とか、門の外から来た人とか、わかるよ。だから、ソウヤくんが言ってることも、わかる」

わかるよ、ともう一度言って、それから少し、怒ったように頬を膨らませた。
目の端に滲む赤を見て、ちょっと悪いことをしたと思う。
それを見て、
(ジェインのことは黙っていよう)
と、ソウヤは思った。
優しい彼女の、優しさゆえの行動の結末がどうなったかなんて、言わない方がいい。さすがの彼女も、未来はわからないだろうから。
ただでさえ、気分の悪くなることを頼むのだ。
できればなんて、ソウヤが思うのも憚られるが、それでも思う。

(罪悪感なんて、彼女が抱きませんように)

「ちょっと力借りるだけだよ。俺がちょちょっとアイツ連れてくるから、リオは俺に力貸してくれるだけでいいから……」

何でもないことのように言ってやる。
だけどリオは騙されてくれなかった。

「うん。ワタシは、ソウヤくんを誇りに思うよ」

ぎゅっと、目を閉じて。
腕を伸ばして、ソウヤの額に手を触れながら。
リオは歌うようにつぶやく。

「願わくば、ワタシも、ソウヤくんみたいな選択ができますように」

優しい声を聴きながら、緋月ソウヤは肩の荷を下ろした。












巡りはひとつまた超えて。
ブリアティルトに13回目のその時が来る。










(大丈夫だ)

(大丈夫)

(お前ならきっと大丈夫だから)

(ちゃんと拾いに来い)

(大丈夫だって)

(ちゃんと大丈夫なようにしてあるから)

(ほら)









だって、もう何もかもめんどくさいし、楽しいことなんてないし、息をするのもしんどいってたまに思う。
しんどいというか、怖い。

(うるさいなあ)

耳鳴りがやまない。
しんどい。
こわい。
うるさい。
学校に行くのはめんどくさい。というか怖い。
朝起きるのもめんどくさい。というか怖い。
だけど起きないともっと面倒くさいから起きるし、学校にも行くのだ。
今日も行かないといけない。さぼるなんて怖いし、怖いから。

(うるさいなあ)

口に出せない文句が、ずっと頭をぐるぐるしている。
ぐるぐるぐるぐるしていて、頭が痛い。


「……!?」
「………」
「……ですか!?」


(…うう)

いくら脳内でぐるぐるしていても、うるささは消えなかった。
それどころか、肩までゆすってきて物理的なところまで干渉してきた。
仕方ないので目を覚ますことにする。

目を覚ますと、柔らかいものが頬を包んでいて。

「ソウヤさんーー!!!しなないでください~!!!!」
「ぐぐぐ、ぐるじい…」

頬を包んでいるどころか、ホールドされすぎて圧迫死しそうになって、サツヤはテーブルを叩いた。

(テーブル…)

「…えっと……あ、あれ??」

ようやく解放されてみると、何故かそこは自分の部屋でもなければ、教室でもなく、誰かの知らない家、としか形容しようのない、こざっぱりとした、それでいて可愛らしい部屋だ。
四角いテーブルの上にはオレンジ色のテーブルクロスと、花瓶に赤い花。壁には絵が幾つか飾ってあって。
つまりは、まあ、知らない部屋だということしかわからない。

「ソウヤさん?大丈夫ですか?」

加えていうと、先ほどホールドしてきた女性。
三つ編みに黒くて長いロングスカート、いわゆるメイド服…だろうか。
直視できない。
胸のあたりとかちょっとサツヤには暴力的だ。

「あの、えっと、その、えっと、ぼ、僕、なんで…???」

しどろもどろに尋ねると、女性はきょとんとした顔でサツヤの額に手を伸ばしてきた。

「んー、ちょっと熱がある…かしら。ソウヤくん、机で伏せて寝てたんですよ。風邪ひきますよって、起こそうと思ったんですけど」
「え、え??あの、えっと」

どうやら、誰かと勘違いしているらしい。
あわてて、サツヤは首をぶんぶん振った。

「ぼ、僕、緋月サツヤって言います!!あの!!そ、ソウヤさんじゃないっていうか…あのソウヤって僕の兄の名前なんですけど、あの」

自分で言って、自分ではっとする。
ソウヤ。先ほどから女性が言う名前には聞き覚えがあった。

「あの、兄さん!兄さんを、知ってるんですか!?」


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2014-08-17 : SS : コメント : 0 :
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