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アジサイpro様からのいただきもの

アジサイpro様からいただきました!!
赤雫☆激団オールキャラ!ジャラヒが!!天使!!
全員赤雫☆激団キャラそのままで、によによしてしまいます。
続きが!気になる!

********************





«黄金の門»に至ったものは、神々の席に加えられる。そんな――まるでお伽話のような伝承を起源とする世界。ブリアティルト。

この世界の中心にあるとされる黄金の門は多くの異世界と繋がるとも言われており、事実ブリアティルトには異世界からの来訪者も多い。
それが当たり前とまでなっているこの世界では、数多の力や文化がひしめき合うように存在し、そして共存している。

ここアティルトの一画、赤い屋根の家に住む部隊「赤雫☆激団」の面々もそうした来訪者に当たる。
もっとも、元居た世界は違っていたりもするのだが……同じ部隊の仲間として長年過ごした者同士、一緒に暮らしているのだ。

そんなメンバーの一員である少年、サツヤは自室のベッドにて、ゆっくりと体を起こす。
頭が重いような、そんな感覚、何度も経験しているそれを自覚しつつも、無事に次の巡りを迎えられた安堵に、サツヤは胸をなでおろした。

巡り、このブリアティルトという世界は、幾度となく繰り返される巡りの中にある。

巡りを迎えて、3年たってまた巡りを迎えて。
それを自覚しているものは、少ないと言われている。もっとも他の世界からの来訪者の多くは、基本的に巡りを自覚しているようだが……
ともかく、そうした巡りの中に、彼らは生きている。そして、巡りの先、それは必ずしも以前と同じ形を取るとは限らない。巡りを超えた先に行くもの、元の世界に戻るもの、様々な変化が起こる可能性もそこにはあって。
だからこそ、サツヤはいつも通りに、いつもの場所で目覚められたことに、安心したのだ。

いや、安心するにはまだ早いよね、とサツヤは思う。
仲間でありながら別行動を多くとることも多い彼ら赤雫☆激団も、巡りを超えると、一度家に集まることが多い。
それは、彼らの仲間にして世話を一心に引き受ける、メイドの中のメイド、ドロシーが心配するからだ。
巡りを迎えて、皆さんの顔を見ないことには安心できません!とはドロシーの言。
集まるであろう皆のため、コーヒーを入れて待ってくれているドロシーのためにも、まずはリビングに行かなくては。

そう思い、サツヤがベッドから腰を下ろした瞬間、

「ぼ、ぼぼぼぼっちゃん!??」

とそんな大きな声を耳にした。ドロシーの声だ。
そして、ドロシーがぼっちゃんと呼ぶのは、ジャラヒ。かつてドロシーが使えていたというワートン財閥、その子息に当たるジャラヒの世話をしていた名残で、今もジャラヒのことをぼっちゃんと呼んでいるらしい。

ジャラヒの身に何かあったのか、それともジャラヒが何かをやらかしたのか、いい予感は全くせず、寧ろ恐怖もあったけれど。
それでも、仲間に何かあったのなら駆け付けなきゃと、意を決すると、サツヤは急いでリビングへと向かった。

そうして、リビングの扉を開けたサツヤが目にしたのは、いつも通りの笑顔を浮かべるドロシーと、その腕の中できゃっきゃと笑う、金髪の幼子の姿だった。


―――――――――――――


遡ること数分前、金髪の幼子、ジャラヒ・ワートンはリビングのソファの上で目を覚ました。
辺りを見渡すと、見知らぬ空間。寝る前のことを思い出せば、そこにいたのは大好きな兄ジェラルドと優しいドロシー。
いつものように、ジャラヒが読んでとねだった絵本をにいさまが読んでくれてて、それをにこにことドロシーが見守っててくれて……

「にいさま?ろろしー??」

そう気付いて、すぐにジャラヒは辺りを見渡す。しかしそこには誰もおらず、手元には大好きな絵本もなく。
少しの間ぽかんとしていた少年だったが、当然すぐに押し寄せてきた寂しさと不安に、泣き虫な少年は耐えられなくなって。

そこで、どこか聞きなれたような足音を、少年は耳にする。

そこに現れたのは、少年にとって大切で、いつだって笑顔をくれる乳母、ドロシーの姿。

「ろろしー!!」

今にも泣き出しそうだった少年は、ドロシーのもとへと駆けていき……

一方のドロシーは、幼いジャラヒの姿を見ると、驚愕に固まってしまっていた。
巡りにおけるアクシデントは知っていて、それでなくてもちょっとのことでは動じない彼女ではあるが、それでも。
根本は変わってないけれど、たくさんのことが変わってしまったジャラヒの、その昔の姿を。自分と、ジェラルドぼっちゃんと、3人で過ごしていた時の、幼い姿に再会することになろうとはまるで思っておらず。

「ぼ、ぼぼぼぼっちゃん!??」


と、思わず大きな声を上げてしまったのだ。

どうしてここにいるのだとか、巡りを迎える前のぼっちゃんはどこにいるのだとか、そうした心配が一気に浮かんできて。
何故だか涙ぐんでしまいそうになったけれど、それでも、今にも泣き出しそうな、泣き虫なぼっちゃんの前で涙を流すわけにはいかないと、気持ちを切り替え、胸に飛び込んでくるジャラヒを受け止めた。

「ろろしー!ろろしー!!」


「はいはい。ドロシーですよ、ジャラヒぼっちゃん。」

あたたかくて、懐かしい。
泣きそうな顔も、安心した顔も、腕の中で魅せてくれる笑顔も。そんなジャラヒの顔を見ていたら、急ごしらえだったドロシーの笑顔も本物に変わって。

「大丈夫ですからね。ぼっちゃん。」

昔、何度もそうしていたように、少年が不安にならないよう、そっとぎゅっと、抱きしめた。


―――――――――――――――――――

サツヤが思いもよらぬ光景を目にしてすぐ、彼らのいるリビングに、仲間であるダリアが姿を現した。
ドロシーに顔を見せようと別邸から歩いてきたようで、呆然と立っているサツヤを見ると、不思議そうに首を傾げる。

「どうしたの?そんなところに突っ立って」

淡々とした女の声に、サツヤは困ったように笑って。

「えっと、なんていえばいいのかな?ドロシーの悲鳴を聞いて、急いで駆けつけたらあの子がいて……」

とりあえず、起こったままを正直に話したサツヤが指差す先に、ダリアは視線を向けた。

ドロシーの腕の中にいるのは、綺麗な金髪をした幼子。それだけ把握したダリアは、くるりと踵を返し

「それじゃあ、ドロシー。顔は見せたし、ちょっと出かけてくるわね。」

とだけ言って歩き出した。どうにも子どもが得意ではない彼女は、面倒ごとの気配を感じそれを回避しようとしたのだろう。

「ま、まって……!」

「何よ、私には関係ないことでしょう?それに……」

子どもは苦手だって知ってるわよねと、言葉をのせた鋭い視線に、サツヤは竦んでしまうが、しかし、どうにも悪い予感がするサツヤは続けて

「多分、これは皆で話し合わなきゃいけない、部隊の皆にかかわることだと思うから……」

そう自信なさげなサツヤをフォローするように、ドロシーが言葉を継いで。

「この子は、ジャラヒぼっちゃんですから……」

あぁ……とどこか納得した様子で苦笑するサツヤに対し、ダリアは表情を変えないまま、

「帰るわ。」

と一言だけ。

「でも、ほら、この巡りはジャラヒが部隊長をすることになってたでしょ??そのあたりも、話し合わなきゃだし……まずは、ロイとリオちゃんを待とうよ」

そう言って引き留めるサツヤと、こちらを見るドロシーの視線に気づいたダリアはため息を一つ吐くと。仕方ないわね……と足を止めた。


――――――――――


「それで、その子はジャラヒってこと?」

「はい。サツヤさん。おそらく、私が乳母をしていたころの、5歳ぐらいの姿だと思うのですけど……」

知らない場所、知らない人におびえるジャラヒをあやし終えると、ドロシーが小さな声で答えた。
ジャラヒは安心したのかドロシーの腕の中ですやすやと眠っており、起こさないようにするための配慮だ。

「なんでジャラヒが子どもになっているのは知らないけど、とりあえず部隊長はサツヤがやればいいんじゃない??」

「それが、どうにもぼっちゃんには子どもになったという自覚はないようなのですよね。ここのことも初めて見るような反応でしたし……あ、サツヤさんが部隊長なのは賛成ですよ!」

早く話を終わらせたいという気持ちを隠すこともないダリアの言葉に、ドロシーが苦笑したように答える。

「それじゃあ、子どもの頃のジャラヒがこっちに飛ばされてきたってことなの、かな……?」

勝手に部隊長を押し付けられそうな流れを無視してサツヤが続けると、ドロシーはわかりません。と首を振って。

「とにかく、元の……巡りが来る前まで一緒にいたぼっちゃんのことも心配ですし、このぼっちゃんをこのままにしておくことも出来ません。」

その言葉に、うんうんと頷くサツヤと、黙って―――しかし否定はせず―――聞くダリアは顔を見合わせ、それからジャラヒの方を見る。

面影は確かにある……が、今のジャラヒとはどうにも結びつかないような……

そんな違和感を感じる二人の視線を感じてか、ドロシーの腕の中で眠っていたジャラヒはすぐに目を覚ましてしまったようで、ふわぁ~と大きなあくびを一つ。

ジャラヒはドロシーの顔を見上げた後、こちらを見る二人を交互に見て……また今にも泣きだしそうな顔で、ドロシーを見上げ

「ろろしー……あのこわいおねーさんは……?」

「大丈夫です。怖くないですよ。ぼっちゃん。可愛い女の子がダリアさんで、もう一人の男の人がサツヤさんといって、二人とも優しい人ですから 。」

安心させるように、柔らかい声色でそう答える。
怖いと言われたダリアは、なんだか複雑そうな顔をしていたが、そのままドロシーがダリアにすいません……!と謝罪しているのを見ると、何かを言う気にもなれなくて、
またため息を一つつくと、近くの椅子に腰かけた。


「ろろしー、えっとね、にいさまは?それに、ここどこ……?」

相変わらず委縮した様子のまま、不安そうに尋ねるジャラヒに、ドロシーはどう返答するか困ってしまった。
いっそ夢の世界だと説明すれば、この純粋な幼いジャラヒはそれを信じるだろう。
しかしそうなれば元に戻れずここで暮らす、となった時にどうしても不都合が生じてしまう。
かといって正直に話すとなると、どこからどこまでを話せば混乱させずにわかってもらえるのか難しいところで。

「ここはね、赤雫☆激団«れっどどろっぷ»って言って世界のために戦うチームのすむお家なんだよ」

と、困っているドロシーに助け船を出したのは、サツヤだ。

世界のために、とはちょっと違うが、嘘にならない範囲で、尚且つジャラヒの気がそちらに向くように選んだその言葉は、狙い通り幼いジャラヒの心をつかんだようで。

「すごいっ!せかいをまもるひーろーなんだね!すごいよろろしー!ろろしーもなかまなの!??」

ドロシーの腕のなかできゃっきゃと飛び跳ねて喜ぶジャラヒに、ドロシーは頷いて。

「はい。それに、今日からぼっちゃんも仲間ですね。私たちは、みんな、仲間です」

その言葉でジャラヒは心から安心できたようで、だりあおねーさんはなにができるの??と先ほどまでこわがっていたのが嘘のように、ダリアへ両手を伸ばしている。

いきなり話を振られたダリアは少し眉を顰めると、口元に手を添え考えるそぶりをみせていたが……

「魔法が使えるわ。マジカルウィッチ・ブラックブロッサムに変身して、誰にも気づかれないまま悪い相手を一息に……」

そう真顔で答えるものだから、思わず後ろにいたサツヤは吹き出しそうになってしまって。
それでも必死に笑いをこらえていると「あなたは?」
とダリアから、サツヤはううん……と唸ると、困ったように頬を掻いて

「僕は、みんなのサポート役かな、みんなが無茶しないようにいろいろ考えたりとかね……」

と控えめな応えを返した。

夢見がちな年頃の少年に話すには失敗だったかな……と少し後悔したけど、
魔法使いダリアに興味津々で目を輝かせていたジャラヒも、サツヤの方にくるりと顔を向けて―――きらきらした純粋な目で―――見て

「すごいっ!にいさまみたいにあたまいいんだねっ!」

そう嬉しそうに話すのを見て、サツヤは少しだけ安堵した。

しかし、あのジャラヒにこんな純粋な目をした時代があっただなんて……とは強く思うし、正直いまだに呑み込めていない。

一方ダリアはといえば、ジャラヒの口から――それも笑顔で――出たにいさまという言葉に目を見開くと、言葉を失っていた。

ジャラヒの兄、ジェラルド・ワートン。ダリアの前ではジェインと名乗っていたあの神出鬼没な得体の知れない男が、こんなきらきらしたジャラヒになつかれている姿を想像したら、なんだか笑えてきてしまうな、薄ら寒くもあるような……
知りたくもなかった二人の過去に驚きを隠せないのだ。

とにもかくにも、落ち着きない様子で家の中を走り回り、ドロシーに赤雫☆激団の活躍のお話をせがんだりする純粋な幼子を、二人は微笑ましく―――それがジャラヒだと思うと複雑な気持ちもある……というか複雑な気持ちの方が大きくなるが―――
眺めていた。

「どうしよっか……これ……」

「どうするって……そうね、世界のこととかそういうのは、ロイに頼めば何とかしてくれるんじゃないかしら」

「でも、ロイがジャラヒのために動くかな……」

「……分からないわね」」

いつの間にか一番遠い席に移動していたダリアの言葉に苦笑すると、サツヤはもう一度ドロシーと戯れるジャラヒへと視線を向けた。

(このままでも、いいの、かな……?)
なんとなく、ちゃんと心が決まったわけじゃないけれど、ジャラヒの様子を見て、サツヤはそんなことを思い始めていた。

ジャラヒの人生は、聞けば不憫な目にばかりあっていたように思う。こんなに純粋な少年がギャングなんかになるぐらいだから、相当すぎるぐらい相当だろう。

そしてサツヤはそのジャラヒが重ねてきた選択が、どうしても好きになれなかった。ドロシーだったり、皆で育てたあの小さな「リオ」のことだったり、ジャラヒの選択はいつだって何かを切り捨ててきたもので。
それは、しょうがないのかなとも思うけれど……

だから、この純粋な「ジャラヒ」がまっとうに成長できるようにするのは、間違いではないんじゃないかとも思って。
いつものジャラヒが心配でもあるけど、また巡りを超えれば戻るかもしれないし、もしこのジャラヒと入れ替わったのだとすれば、そこにはきっとドロシーも家族もいるのだろう。
だったら、詳しくは知らないけど、大丈夫なんじゃないかと思う。いつだって自分にとっての最善を選んで来たジャラヒだから、きっと……

(なんとなく、だけどね……)
そう思考ををまとめたサツヤは、その案を切り出そうと口を開こうとして……

そこに、二人は現れた。

「ジャラだ!ジャラ―!!」」

一目見るなり正体を言い当てた少女、リオディーラは、大きな声を上げてジャラヒのもとへ。
そんなリオの隣に立っていた男、ロイはリオの言葉を聞くと、目を大きく見開いてジャラヒをまじまじとみつめて。
見るからに笑いをこらえた様子で口元を抑え、落ち着いてからダリアの隣――ジャラヒからは離れた席――まで行って、腰を下ろした。
そこには、この件には深くかかわりたくないという意思が分かりやすく見える。

突然、びゅーんっ!と手を広げ駆け寄ってくる少女にジャラヒは驚いたが、その姿を見るやいなや、その場で固まってしまって。

「どーしたの??どこかいたいの??いたいのはワタシがばーん!してあげるからね!だいじょーぶだいじょーぶ!」

固まってしまったジャラヒの手を両手で握ると、リオは赤い大きな瞳をジャラヒへと向けて、にっこりと微笑み。

その笑みに、そしてその姿に、ジャラヒは驚きに染まっていた表情をみるみる明るく染めていく。

「えほんの……おんなのこっ!すごいっ!れっどどろっぷのなかまだったの!??」

興奮した様子で尋ねるジャラヒに、リオはぶいっ!とポーズを決めて。

「そーだよっ!っ!ワタシがれっどどろっぷのリーダー!みんなの願いをかなえるときめき☆きらめきレインボーリオ!」

「かっこいい……!えっとね、ぼくねっ!おはなししたいことたくさんあってね……!」

ジャラヒは感極まった様子で、言葉を何度も詰まらせながら。

「えっと、えっとね、リオのねがいごと、もうかなった?それからっ、おうごんのくに!おうごんのくには!?ほかのみんなのねがいごとも、えっとね……!」


一つ一つ数えるように指を折ったり伸ばしたり、知りたいことをいっぱい浮かべて。

そんな様子を、リオは見守るように見つめる。
それから、ふふっと笑みを浮かべると、口の前で指をピンと立てて。

「ヒミツだよー!」

と、そんな悪戯な言葉を返した。

ジャラヒは口をぽかんと開けて困惑していたが、次第に目には涙がたまっていき。

「それじゃあぼくのねがいごと、いえないよ……」

なんで……と口を震わせるジャラヒの頭を、リオはぽんぽんっと優しく叩く。

「ジャラがね、おっきくなってもワタシのことを覚えててくれたら、教えるから!!」

「でも、おとなになるまでなんて、まてないよ……それにねっ、ぼくのねがいごとは……」

その先を、願いを告げようとするジャラヒの口に、リオは止めるように指をおしあてた。

「だーめ!ジャラの願い事も、ワタシの願い事も、とっておきで、トクベツなんだよ!
とっておきもトクベツも、たくさんの冒険の後だからこそだから!ね!」

リオはルビーのような瞳を爛々と輝かせて、楽しそうにそう言って。
そのとっておきもトクベツも、たくさんの、長い長い冒険をしてきたリオが言うのなら……
涙は浮かんだままだけど、そう納得したジャラヒは唇を噛むと、うん……!と大きく頷いた。


「ジャラはつよいね!いいこいいこ!」

リオがジャラヒの頭をわしゃわしゃとなでると、照れくさそうにしながも口元を緩めた。

「よかったですね。ぼっちゃん……!ずっと会いたかったですもんね……!」

その様子を後ろで眺めていたドロシーは、感動した様子で涙を拭うと小さく拍手を送っている。
二人のやり取りの邪魔をしないように気を使いつつも、二人の様子をうかがっていたサツヤは、話がひと段落したのを見計らうと、遠慮がちに声を上げて

「えっと、ロイとダリアの話し合いの結果、次の水曜日にロイ、あっ向こうに座ってるお兄さんなんだけど……
ロイが元のせ……じゃなくて、家まで連れてってくれることになったんだ。なぜか僕が部隊長をするのが条件になってたけど……」

そこまで言って、ジャラヒのもとまで歩み寄ると、目線を合わせるようにしゃがみこんで。

「ということで、あと二日間、家に住んでもらおうと思うんだけど、いいかな?」

そうして差し出された手をまじまじと見つめて、笑みを顔いっぱいに広げると「うん!」と元気の良い返事を返す。
サツヤの手を取ると、そのままぴょんぴょん飛び跳ねて、それから興味深そうに周りの皆へと視線を向けた。

「よろしくねっ!リオにろろしーにだりあにさつやにろい!いっしょにせかいのためにがんばろー!」

おーっ!と元気の良い掛け声を。直後、あれ?と首を傾げて不思議そうな顔で、またみんなの方を見回して

「……どういうふうにがんばるの……??みんなのねがいごとをかなえてあげるの……??」

そんな幼いジャラヒの素朴な疑問に、皆は顔を見合わせた。


―――――――――――――――――――
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2017-12-23 : いただきもの : コメント : 0 :
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アネモネちゃんVSジャラヒ~野球拳~

もねさんと、アネモネちゃんと野球拳を挑むジャラヒのネタ話をしたら描いていただきました!!
mone-jaraane.jpg


ジャラヒの不憫&みじめさに感激したので、続きもどきを描かせてもらった結果
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以下最初に戻る。
2016-04-05 : いただきもの : コメント : 0 :
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今までいただいたリオ子

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2015-04-06 : いただきもの : コメント : 0 :
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頂き物【ジャラヒ・ワートンと謎のプリンス】by幽しの剣様

幽しの剣さんからSSをいただきました!
出演は、「幽しの剣」のルゥチェさんと、「通行集団」のユーリさん。と、赤雫のジャラヒです。



【ジャラヒ・ワートンと謎のプリンス】

身体は疲れ切っているのに眠れない。
そういう時はつまらない事を考え出して憂うつになるものだ。

だから――オーラム共和王国の傭兵部隊赤雫激団の一員――ジャラヒ・ワートンはいっそ眠らないことに決めて、粗末なベッドから身体を起こした。



昨日はまったく長い一日だった。



周期を記憶する者の間で“13期”と記録される今回の“巡り”―――王都アティルトの地下にある《黄昏の聖域》の謎の拡大現象により、戦場は広大な地下遺跡群へと広がった。

ジャラヒが他の幾つかの部隊と共に駐留していた地下闘技場跡を巡り、イズレーン皇国軍と激しい戦闘になったのが正午前。一旦撤退して負傷者を後退させ、部隊を再編し闘技場跡を奪還したのが日没後であった。

増援と交替して駐留を任せ、ようやく地上に戻ってきたジャラヒは日付の変わった深夜、軍が臨時に借り上げた安宿の小汚いベッドに身体を投げ出したのである。




そしてその数時間後――窓際にある机からしばらく窓の外を眺めることにした金髪の青年は、音を立てないよう静かに椅子を引いた。

階下では同じ部隊に編入された戦士のユーリと女剣士のルゥチェが疲れ切って寝ているはずだ。起こしては悪い。元いた世界で昔ギャングだったというとマナーとは無縁と思われがちだが、実はジャラヒは細かいところに気が回るほうだ。彼自身は、半分は乳母の躾けのおかげで、半分は自分の生来の気質だと思っている――犬猿の仲の赤雫激団の同僚ロイは忌々しくも後者を否定するだろうが!

そういえばそのロイ青年も昨日の戦闘で重傷を負って王都へ送還されたのであった。

まーあいつのことだから死にはしねーし、怪我人として周囲から優しくされるのが腹立たしい。
そんな事を考えて、ふ、と笑う。
なんだか嫌いな男のことばかり考えているじゃないか。
(紙とペンでもあれば、落書きでもして時間つぶせるんだけどな)
そう考えて無意識に机の引き出しを開けようとしたジャラヒはようやく“異変”に気がついた。

僅かに“しゅうしゅう”と湯でも沸かす時のような音が引き出しの中から聞えてくる。
心なしか引き出しそのものも熱をもっているようだ。

(な、なんだ?)

恐る恐る引き出しを開けようとしたジャラヒは突然手前に伸びてきた引き出しに強く突き飛ばされて吹っ飛び、椅子ごと後ろ向きに転倒した。

「うお!なんだよ、いっ・・・」

ジャラヒは言葉を続けられなかった。

引き出しの中から褐色の肌の筋骨隆々の男が裸の上半身を現したのだ!


「う  お  あ  あ  あ  あ  あ  あ  あ !!!」

この不幸な青年は叫びながら扉まで這って行き、ドアノブを回して退路を確保すると、ようやく後ろを振り返った。男はまるで湯船から上がるかのごとく引き出しの縁に足をかけて机の前に降り立ったところである。何も身に着けていないのは上半身だけではない。全裸だ。見事なまでに。


「な、なんですか・・・夜中ですよ、騒々しい・・・」いかにも寝起きという寝癖だらけで半目のルゥチェが扉の隙間から部屋の中を覗き込んだ。「・・・・・ん」

少女の視線は部屋の中央で全裸のまま仁王立ちする男に真っ直ぐに注がれる。上から下に動いた視線はもう一度上に上がって身体の真ん中より少し下の一点でしばし止まった。それから腰をぬかさんばかりにドアノブに縋りついたままのジャラヒを見、顔を引っ込めて静かに扉を閉めようとしたところで、ルゥチェは慌てたジャラヒに腕を掴まれた。
「おい!なにスルーしようとしてんだ、おまえ」
「だ、大丈夫ですよ・・・誰にも言いませんから・・・わ、私だって小さな子どもじゃ、ないんで。どうぞ楽し「いや、違えよ!なに考えてるか言わなくてもわかるけど、それは違えから!」

「大丈夫ですって・・・ただちょっと」

「びっくりした」

「だけです」

「ま、待て。とにかく説明させろ。俺もよくわかってねえけど、わかってる事だけ説明させろ」ここで逃げられては後々色々困りそうなジャラヒが、ルゥチェの腕を掴んで部屋に引っ張り込もうとしているところで、廊下がみし、と軋む音がした。
音の方に反射的に目がいくと、廊下の先に少し困ったように赤面したユーリが立っていた。完全に「見てはいけない場面に出くわしてしまった」という顔だ。彼もまた騒ぎを聞いて様子を見に来たところであった。


「す、すみません!」踵を返そうとするユーリに、ジャラヒがまた慌てて声をかける。「おい、おまえもかよ!違えよ!待て、とにかくおまえも部屋に入れ。説明できるところだけ説明させろ、頼むから!お願いだから!」

*****


ジャラヒが口早に説明を終えると、並んで体育座りして聞いていた二人はとりあえずは納得したような顔をした。
「・・・ユーリ、おまえもおまえだ。だいたいこんな女、俺が部屋に連れ込むわけねーだろ」
ジャラヒが忌々しそうに隣に座ったルゥチェを見ると、女剣士も「ま、まあ、私はようじょ、じゃありませんからね・・・」と反撃する。
「消し炭にするぞ、おまえ・・・」さすがにルゥチェはダリア――赤雫激団の同僚でありながら、一度はジャラヒの命を狙ったこともある暗殺者の少女――の友人である。相性が悪い。
「ジャラヒさん、それより、この人ですよ」
ユーリに言われて思い出した。そうだ。この全裸男だ。人の部屋にいきなり現われ――しかも全裸で――今も自分の身体を見詰めながら難しい顔で突っ立っている。何を考えてても構わねえが、そんな事は他所でやってくれ、とジャラヒは思った。

「おい、あんた」
ジャラヒが声を掛けると、たっぷり3秒は置いてから男はゆっくりと顔を向けた。
「あんた誰だ?なんでそんなとこから出てきた?きちんと説明してくれ。・・・いや待て、説明は後でいい。その前に服を着ろ、隠せ、とりあえず」

そうは言ったものの、全裸で現われたのだから男が服など持っているはずがない。荷物に着替えはあるが、どちらかといえば細身な自分の服が合うとは思えなかった。ジャラヒがそう考えた時、男はようやく口を開いた。



「余は第129614525662798層地獄の王が第2子バミルである」



今度は3人の息が合った。
「・・・はあ!?」

「ここはブリアティルトであろう?やはりかの門により力を制御される、という噂は本当だったのだな」

地獄の王子?
この世界に流れ着いた者の中には神やら半神やらいなくもないが、目の前で名乗られるとやはり突拍子もない話である。
「ほ、ほんもの、ですかね・・・」
見た目は人間と同じに見える。それらしい蝙蝠のような翼やら角やら牙やらは何もなかった。
「わからねーな。とりあえず頭に角は・・」
耳打ちしてきたルゥチェに小声で答えたジャラヒは危ないところで言葉を飲み込んだ。
ユーリの前だ。取り返しのつかない事を言うところだった。



「あ   く          ま   」



ユーリが小さく呟いた。
彼は羊角族だ。幼い頃、その角ゆえに心ない者から時に刃のような言葉を浴びせられてきた。
怯え、恐れを目に浮かべたものたちが通り過ぎざまに囁くのが聞こえる。
――悪魔――と。


「な・・・・なにしにブリアティルトに来たんです!?まさかこの世界を征服しようとか人間を滅ぼそうとかいうつもりですか!?」ユーリが気色ばんでバミルに詰め寄る。それでも敬語を使ってしまうあたりが彼らしい、と場違いにもジャラヒは思った。
「神も人も自分の都合のいいように我らを語る。地獄とて輪廻の輪の一部に過ぎぬ。応報はその基礎ぞ。魂が地獄で責めを受けるのは、おまえ達の言葉を借りるなら自業自得というものだ」

バミルが窓のカーテンに向かって手をかざすと、それは引き千切れて彼の身体に巻きつき、一瞬で黒の礼装へと変わった。
「ブリアティルトには見聞を広めに来た。褒美はとらせる。案内せよ」


*****


(どうしてこうなった)
市場を興味深げに歩く“地獄の王子”の後に続きながら、ジャラヒは額に手をやった。
(生まれ変わったら魔神とか悪魔とかと関わらない一生を送りたい)



バミルの言によれば、彼の国――というか地獄――では父王が定めた世継ぎ以外は自ら新しい地獄を創らなくてはならない。その為に人間を深く理解したい――という事らしい。
情報収集に配下をブリアティルトに送ったものの、さっぱり戻ってこないので、“黄金の門の歪みが大きくなった――つまり入りやすくなった”この機会に自ら視察に赴いた・・・・・そうだ。

軍からは宿にて待機の命令を受けている最中だから本来ならツアコンの真似事などしている場合ではないのだが、あの人を監視します!と息巻くユーリを一人にするのは危険に思えた。面白がったルゥチェが私も付いて行く、と行ったものの、たぶんこいつは頼りにならない。
―――自分の目の届かぬところで大切な人間が消えるのは、もう沢山だ、とジャラヒは思う―――(仕方ねーか。ユーリになんかあったら寝覚めがわりいし)


夜明けを待ってアティルト散策に繰り出したこの珍妙な一行は、とりあえず名所旧跡を練り歩いたものの、地獄の王子は全く興味を示さない。関心無さそうにされると、適当でいいと思っていたのに悔しいもので、なんとか面白そうな顔させてやろう、という気分になってくる。
「き、きっと人がいるところが、いい、んじゃないですかね・・・人間を理解したいって言ってたし・・・」
「でも、人ごみに連れていくのは危険じゃないですか?」
「まーいきなり暴れたりはしねーんじゃねえかな」
「わ、悪そうな場所が嬉しいんじゃ、ないですか・・・?悪い感情を体内のデビル袋に吸収するんですよ、きっと」
どこまで適当なんだこいつ、と思ったがルゥチェが言うことにも一理あるような気がしてきた。そこで午後から賭場や私娼街、貧民街に行ってみると確かにそれまでとは表情が違う。人間の感情が渦巻くようなところがいいのかもしれない。もっとも万一に備えて3人は武装していたから恐ろしく悪目立ちし、絡んでくるチンピラを巧くあしらう役を任された――というか生真面目なユーリや変人のルゥチェには無理なのだ――ジャラヒはいい加減疲れ果てていた。「・・・・おい、悪いとこはもういいだろ、市場とか行こうぜ・・・」

うんざりした顔のジャラヒと表情のないバミルが並んで歩く、その後ろ。

「・・・ん、・・・リさん、・・・ユーリさん」
「え、ああ。ルゥチェさん・・すいません。考え事してて」
南門近くの市場を目指す道すがら、隣を歩く女剣士に声を掛けられ、角持つ青年はハッとした顔をした。
「そんなに恐い顔しなくても、あの人は悪い悪魔じゃ、な、なさそうだよ・・・」
「・・・・俺、そんな顔してましたか」
「し、してた」
「ルゥチェさんは・・・平気なんですか、あの人は悪魔なんですよ。今まで何ともなくたっていつ本性を現すか」
「そしたら、そん時やっつければいいんじゃない?わ、私はべつに正義の味方でも光の使徒でもないからねえ・・・・」
ユーリだって本当は分かっているのだ。“彼ら”を敵視するのは筋違い・・・言ってみれば逆恨みだ――幼い自分を傷つけたのは悪魔じゃない。悪魔を恐れただけの“普通の人間”なのだから。

だがもし悪魔というものが存在しなかったなら。

俺は――――今の俺になっていたんだろうか?


*****


「ジャラヒ、あれは何だ」
市場を見終えた一行が次に噴水前広場へ向かう途中、人家や商店が途切れ、空き地がやや目立つ辺りでバミルは足を止めた。
ん、と地獄の王子が指差したほうに目を向けると空き地にカラフルなテントが立ち並び、人だかりができていた。
「あれは、サーカスだな」
「・・・サーカス」
「見世物小屋だ。動物や道具を使った芸を見せるんだ」
「ゲイっていうのは・・・・」
「ルゥチェ、おまえは黙ってろ」

興味が湧かないのか、ぷいと顔を背けて再び歩き出したバミルだが、数歩歩いたところで何かに気付いたように急に立ち止まった。

「・・・やはり、サーカスとやら、見ておくとしよう」

テントを潜ると既に芸は始まっており、4人は入り口近くに適当に腰を下ろした。

ピエロの軟体芸、ジャグラーの玉乗りジャグリング、トランポリンを使った曲芸と続き、大男が口輪をつけた熊と格闘を始めたところで、バミルが急に明後日の方向に目を向けた。

「どうした?」ジャラヒが視線の先を追う。


風船だ。

出口を潜り、ふわりと外へ飛んでいく。


ひとりの小さな男の子がそれに気付き、テントから飛び出した。
男と熊のレスリングに釘付けの父親は手を離した息子に気付きもしない。
外に出た男の子はさらに風船を追いかけ走る――まるで何かに魅入られたように。

風船は手繰りよせられるかのように、一番奥のテントの前に佇むピエロの手に納まった。

男の子がピエロの前で立ち止まると、ピエロは風船を彼にゆっくりと差し出し―――


「シャァァッ」
獣のような唸り声を上げながら、赤黒い牙を剥き出しにした!


「ッ、アトム」
子どもの首に伸ばした腕が青い魔弾に弾かれ、ピエロが痛みと衝撃で数歩後退する。
「おいなんだよ、ぼっちゃんよりも悪魔っぽいのがいるじゃねーか」
駆けつけたジャラヒが僅かに息を弾ませながら言った。
さらにその横を鋭く踏み込んだルゥチェが抜打ちで胴を横に薙ごうとしたが、ピエロは人間離れした跳躍で飛び退いてみせる。

けけッ。
道化師の瞳が濁った黄色に輝く。
魔力を感じる能力など無くても本能で分かる。


――こいつは“魔”だ。人間じゃない――


ユーリは固まっている男の子を抱き上げると、急転換してジャラヒの数歩後ろまで怪人から距離をとった。腕の中の小さな少年は、憑き物が落ちたようにすっかり怯えており、今にも泣き出しそうな顔をしている。
そうだ――俺はこんな顔をしていた――周囲に怯えて。
「ぼく、名前言えるかい」
「え、エド・・」
「ようし、エド。泣くのはもうちょっと我慢して。あそこにテントがあるね。そこでお父さんが待ってる。そこまで後ろを振り返らずに走るんだ。できるね?」
ぶるぶると男の子は首を横に振り、ユーリにぎゅっとしがみついた。怯えきっている。
「エド、これは君にしかできない。ここは危ない。お父さんに知らせてみんなでここから逃げるんだ。君はお父さんを助けたいだろ?」
少しだけ考えて男の子は頷いた。
「よし、行くんだ。エド!」
ユーリに背中を押された小さな勇者が一目散に駆けて行った。
(今の俺は違う、あの頃とは。あの時泣いたから――今の俺は誰かが泣かないように戦える)
きっ、とピエロに向き直ったユーリが砲槍を突きつけながら叫ぶ。
「何者だ、あなた」

撃たれた腕をさすりながら、ピエロは不敵に口の端を吊り上げた。
「芸を見ても催眠にかからんとは・・・・驚いたな」
ピエロの隣にどこからともなくジャグラーや大男たちが現われた。芸をしていた4人全員が共犯というわけだ。


「くく、邪魔するなら貴様らの魂もい「おまえ達、余の命を放り出し、こんなところで何をしておった」


背後からのいきなりの声に、驚いたピエロたちは飛び退いて身構えた。いつの間にかバミルが怪人たちの背後に立っていた。
「いつの間に!なんだ貴様!?」
「余の顔、見忘れたか」
「なにぃ、余、だと?」
記憶の糸を手繰るように目を細めたピエロの顔がハッとしてから大きく歪んだ。
「で、殿下・・・!」
「輪廻の外で勝手に魂を収集し、私物化しておったな!」
バミルの喝に一瞬ひるんだピエロだったが、すぐに覚悟を決めたようである。見られた以上やる事はひとつしかない。
「で・・・殿下がこのようなところに来られるはずがない。構わん、やれッ」

ピエロたちの身体がみるみる膨張する。衣装が裂け、変身を解いて地獄の住人の本来の姿を現した。

ピエロは――燃え盛る炎を纏う巨大な車輪に――
大男は――岩塊の巨人に――
ジャグラーは――鎖を全身に巻きつけた黒き人形(ひとがた)に――
トランポリン使いは――鉤爪を持った猿のような獣人に――



近くで悲鳴が上がった。
催眠が解けた見物客たちがテントから出てきて、異形の魔物の姿に気付き、恐慌をきたして逃げ始めたのだ。エド少年もあの中にいるはずだ。
バミルに付き合って戦う義理はないが、せめて彼らが逃げる時間は稼がねばならない。



「くるぞ」バミルが色のない声で告げると、それが戦闘開始の合図となった。


鎖の悪魔が展開した数十本もの鎖で視界がいきなり黒に染まる。
「ルゥチェさん、俺の後ろに!」漆黒の鎖は無数の軌道を描いて、最も近くにいたルゥチェと彼女をかばったユーリをその渦に飲みこんだ。

危うく飛び退いてかわしたジャラヒには猿面の獣人と燃える巨大な車輪が向かってきた。
バミルは岩の巨人と対峙している。

傭兵たちとバミルは――三手に分断された。

「おかしいだろおまえら!なんでぼっちゃんに1人で俺に2人なんだよ」
ジャラヒはそう叫んでみたものの、既に互いの距離は離れてしまっている。加勢は期待できなさそうだ。何とかどちらかだけでも倒しておきたいが、ジャラヒはすぐにそれが簡単でないことに気付いた。まず車輪のほうは炎を纏っていていかにも火に――こちらの攻撃も火なのだ――強そうだ。おまけに猿のほうは動きが変則的で狙いがつけにくい。
(・・やべーな、これ。死ぬかも)




(・・このまま打たれ続けるとまずい)
ユーリは槍で捌ききれなかった無数の鎖の鞭を全身に受けていたが、彼の白き鎧はダメージを最小限に止めていた。とはいえ高密度の鎖の攻撃は――黒っぽい木乃伊のような――貧弱な本体の防御を兼ねており、反撃に転じる隙がない。
「ルゥチェ、さ、ん・・・なんとか、なりませんか」

ユーリが後ろで頭を抱えて丸まっているルゥチェに声を掛けると、女剣士はようやく顔を上げて彼の顔を見た。
「よ、よし・・・作戦考えたよ・・・いくよ!」
「え、ちょっ・・・せつめ「次元跳躍!」

幽刃剣士の転送能力は、鎖の悪魔を上空に吹っ飛ばした。
落下の衝撃で倒すつもりなのか―――だが今度は全ての鎖が高跳び棒のように地面に突き刺さり――その衝撃を吸収してしまう。

「今だ!次元跳躍」
すぐさま、ルゥチェは2度目の転送を発動した。
今度は飛んだのが――ユーリ――だ!

一瞬思考が停止しそうになったユーリだが、飛ばされた自分の遥か足下に“鎖を全て支えに使って無防備な悪魔の背中”が見える。青年は女剣士の意図を瞬時に理解した。
「おおお!」
全体重を預けながら逆手に持ち替えた槍を痩せこけた黒い背中に叩き込むと、奇怪な叫び声を上げて悪魔はぼろぼろと乾いた砂のように崩れ落ちた。
「き・・決まった流星ユーリ作戦・・・」
呟くルゥチェの前にどさりとユーリが落ちてくる。
「作戦には着地を含んで下さいよぉ・・・」



「どうした、金髪の小僧!逃げるだけか?ヘタレか貴様!?ヘタレヤンキーか!?」
どこかで聞いたようなムカつく罵声を浴びせられてもジャラヒは敵の波状攻撃を避けるだけで精一杯であった。撃ち返す余裕がない。
元々向き合ったところからヨーイドンで一騎打ちするタイプではないのだ。
身体を捻って猿の攻撃をかわしたものの、弾みで思わず尻餅をついてしまう。
そこへ燃え盛る地獄の車輪が迫った。
――――――が


「アトム」
ジャラヒは小さく術発動のキーワードを呟いた。
吹き飛んだのは地面。
攻撃をかわしながらこっそり仕込んでいた地雷代わりの大量の魔弾が爆ぜて地面を混ぜ返し、車輪を凹凸にとられた悪魔は、ジャラヒから逸れて無人のテントに突っ込み幕に絡まった。
「キィッ・・!」
猿面の悪魔が焦ったような声を上げる。
車輪と交互にジャラヒを攻撃していた猿面だが、いきなり1対1になったからといって急に止まる事はできなかった。
「アトム」
魔力で誘導された4発の青い炎弾がついに獣人を捉え、燃え上がった悪魔は地面に落ちて砂粒のように砕けた。
(来るタイミングが分かってればカウンターくらいできるんだよな)




ユーリたちが勝ち、ジャラヒも一体を斃すと、まるでそれを待っていたかのようにバミルが攻勢に出た。それまではあしらうように巨人の拳打を受け流していたが、彼がすっと手をかざすと巨大な岩の拳がぴたりと止まる。
「おのれぇ!」
絡みついた天幕を燃やしてテントから飛び出した車輪の悪魔がジャラヒを無視してバミルに襲いかかったが、地獄の王子が反対の手をかざすとやはり金縛りにあったように動けなくなってしまう。
「成敗」
バミルが両手を交差するように振ると、巨人と車輪は浮かび上がり空中で――悲鳴を上げながら――激突して爆散した。
「す、凄い・・・」よろよろと近づいてきたユーリが息を飲んだ。「私ら、べつにいらなかったですね・・・」ルゥチェも呆けたように呟く。



辺りに静寂が戻るとバミルはふっと何かを追うように空を見上げた。
沈みゆく太陽を背にしたその姿は少しばかり神々しく映る。

飛んでいく魂でも追っているのかな―――とジャラヒは思った。

*****


「・・・どうする、観光続けるのか」
服の埃を払いながらジャラヒが言うと、バミルは金髪の青年の方を見ずに首を横に振った。
「もう少し滞在したかったが、生憎愚かものどものした事の始末をつけに帰らねばならなくなった。奴らが集めていた魂は我が名にかけて元の身体に戻しておこう」
地獄の王子が腕を一振りすると、一瞬視界が暗転し、次の瞬間には全員がジャラヒが泊まっていた宿の部屋に移動していた。
「すげーな、さすがなんでもできるな、王子さまは」とジャラヒが呆れたように呟く。

バミルはジャラヒたちをぐるりと見回すと「世話になったな、約束どおり褒美をとらせよう」と厳かに言った。
3人は顔を見合わせた。
「金や宝物は望まぬのだろう。申せ。記憶を変える、想い人に会う、なんでもよいのだぞ」
“記憶”はユーリに、“想い人”はジャラヒとルゥチェに向けられた言葉である。
あの・・・とユーリが躊躇いがちに小さく手を挙げた。
「俺はなにもいりません・・・・もしどこかだけ都合よく変えたらそれはもう俺じゃなくなってしまう気がするんです・・・それに俺はずっとあなたの事疑ってたし、何も受け取る資格がありません」
そう言うと、ユーリはばつが悪そうに苦笑した。
次になんか偉そうに腕組みしたルゥチェが、私はァと口を開く。
「明日1日、ロウハルト元帥の語尾を“にゃ”に変えてほしい」
「ルゥチェやめろ。マジやめろ」
「えー!・・じゃあべつにいいや褒美とか。急には他に面白そうな事思いつかないし」
「・・いやべつに面白くなくていいんだけどな」
「ほう、おまえは両親の顔を知らんのだろう。会わせてやる事もできるのだぞ」
「ん・・・お、お父さんお母さんには会ってみたいけど、自然でいい。会えたら会えた、会えなかったら会えなかったで。・・・・だからべつにいい」
バミルは納得したようなしなかったような表情を浮かべ、最後にジャラヒを見た。

「おまえはどうする」

ジャラヒは唾をごくりと飲み込んだ。
彼が捜し求める少女――また、会いたい――リオディーラに。

でも――
思わず、ふっと笑う。

「俺も止めておく、魔神とか悪魔とは相性が悪くてな。まー貸しにしとくから俺が地獄に落ちたら減刑してくれよ」


3人の答えを聞いたバミルは意外そうな顔をした後、可笑しそうに微笑んだ。
「人間とは面白いものよの」
彼が手をかざすと机の引き出しがひとりでに開き、地獄の王子はふわりとその中に飛び込んだ。上半身だけを引き出しから出したバミルは一度振り返り、3人を見渡してニッと笑う。
「ではさらばだ。地獄に落ちたら会いに来てくれ」
彼の逞しい背中が異空間の闇の中に消えると、引き出しは元通りにぴしゃりと閉じた。


「ああ!縁起でもねーがな!」


*****


少し話しをしてユーリとルゥチェが各々の部屋へ消えた後、ジャラヒは硬いベッドに身を投げ出し、ふうとひとつ息を吐いた。
長い一日だった。明日からはちゃんと待機命令を守らなければ。
そう考えながら、窓のほうへ寝返りを打つ。そろそろ日付が変わる時間だろう、明日は天気いいのかな、そんなとりとめもない事を考えていた――その時。


がたがた、と机の引き出しが揺れ、ジャラヒはびくりとベッドの上で飛び上がった。


引き出しがひとりでにすうっと手前に伸びてくる。


のそり、と裸の男が上半身を現した。金色の髪、背中にはまるで鳥のような白い翼。
凍りつくジャラヒにゆっくりと顔を向け、男が問う。
「君・・・・ここはブリアティルトかね?」

「ひっ!」


[終わり]

tag : ジャラヒ

2014-11-26 : いただきもの : コメント : 0 :
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【SS】物語を繋ぐモノ【short story】byナンバーズ・ラボ

ナンバーズ・ラボ様にいただきました!!

:::::




「失礼する。ジャラヒ殿はご在宅かな?」

その男、フィボナッチは前触れもなく…行動に脈絡や理由を求めるのは困難な人物であるが…赤雫☆激団の本拠に現れ、応対に出たドロシーに尋ねた。
「坊ちゃんでしたら、外出しております。さほど遅くはならないと思いますが、研究室へへ伺うようお伝えいたしましょうか?」
「遅くはならないのであるか…支障なければ中で待たせてもらってもよいかな?……おおそうだ、これはカプレカの奴からなんだが…皆で食してくれと持たされた。手作りのプリンだと言っておったな。」
「これはわざわざ…ありがとうございます。フィボナッチさんのお時間に問題がなければ」
ドロシーが言い終わるのを待たず、フィボナッチは肯定の雰囲気だけを感じ取り勝手しったる他人の家とばかりに客間へと入っていった。


夕暮れも迫り、フィボナッチの来訪から四半日程のときが経つころ…尋ね人ジャラヒが本拠へと戻ってきた。リオディーラの育児書がらみで馴染みとなった本屋でついうっかり話し込んでしまったのだ。

「フィボのやつが待ってるだって…?いったい何の用だってんだか。…ん?」

ドロシーから来訪を聞き、外出着から着替えようと私室へ入ろうとする。だがその矢先、室内に人の気配がする。リオはさっき食堂でカプレカからもらったというプリンを満面の笑みで食べていた、違う。フィボ?やつは客間で待っているとドロシーから聞いているからこれも違う。となると…空き巣だな。
即座に判断を下し行動へ移す。すばやくドアを開き、侵入者に反応する隙を与えず魔法を放り込む。

「アトムっ!お前が誰だかしらねぇが、忍び込んだ場所が悪かったとあきらめるんだな」

ややあって魔法の煙が晴れてきたとき、ジャラヒは息を呑んだ。侵入者は相変わらず…というよりもむしろ、放り込まれた魔法を意に介さずそこに佇んでいたのだから。
歴戦の傭兵ならともかく、こそ泥程度には耐えうるはずもない…であればリオの身が危ない!己のことはさておき愛する少女を守らんときびすを返しかけたその瞬間、部屋の中から声がかけられた。

「くくく…ジャラヒ殿、遅かったではないか。まったく……待ちくたびれてつい家捜しをしてしまったぞ。まぁ、最も欲しかった物はないが、代用品は見つかったという所であるがな…くくく…」

常に寝癖のようなくせっ毛をしている頭髪はアフロになり、よれよれの白衣は煤けていたが声の具合は間違いようもない、客間で待っているはずのフィボナッチであった。それが確認できるとジャラヒの全身から一気に力が抜け、代わりに怒りがふつふつとこみ上げてきた。

「おいフィボ、お前は客間で待っているんじゃなかったのか!?って言うかなんで人の部屋に勝手に入って家捜ししてるんだ?おぃ、なんか言えよ!ぜぇはぁ…」
「うむ、そんなに怒鳴らずとも答えるとも。まぁ…ジャラヒ殿の帰宅を待ちきれず、同意を得ることを前提にして行動していた…そういう事であるな。」

勢い込んで詰め寄るジャラヒに対し、フィボナッチはいつもと変わらぬ軽薄な…人を小ばかにしたような笑みを浮かべて軽く答える。が一転、常にはないまじめな表情になり詰問者へ問いかけを返す

「ジャラヒ殿…このままでいいと思っておられるのか?ロイ殿の事、そして…リオ殿の事…」
「いいなんて思ってるわけねぇだろ!けどよ、俺にできる事なんて…(ぶつぶつ)」

勢い込んで言い返すものの、まさしく竜頭蛇尾の体で言いよどんでしまうジャラヒ。しばらく話し込んだ後、日を改めてジャラヒがフィボナッチのラボを訪れる事となった。その様子を見ていたロイによると「悪徳訪問販売員に言いくるめられたジィさんみたいだったぜ」とのことである(合掌)

それから数日、準備ができた旨の連絡を受けラボを訪れたジャラヒ。朝早くに訪れ、研究室へと案内された彼の目に飛び込んできたのは、およそプリアティルトの文明水準からは考えられない『医療機器』によく似たものであった。

「ジャラヒさん、引き返すのなら今のうちです。主任からおおよその事は聞きましたが…成功率は数%といったところでしょうか。下手をすれば命にもかかわってきますよ…」

そう問いかけてきたのは、ラボの用心棒にしてハウスキーパーのカプレカである。フィボナッチほどではないが、彼の研究に対する理解を持つ人物である。実験に危険が伴うというのはそう外れていないのであろう。


「心配サンキュな。だけどよ、引けねぇことはあるのよ。分かんだろ?特に…俺にとって、あのリオの事ならなおさら…な」
「そこまで決心しているなら止め立てはいたしません。後は…主任の気まぐれで危険な行程が追加されないように祈るだけです。」
「ははは…確かにそれが一番怖えや。ま、フィボの技術自体は疑ってねぇからよ。危ねぇことしそうになったときに止めてくれよ。頼むぜ…っておいフィボ、これは何だよ!?」
軽口の応酬で不安を軽減している間にも黙々と準備をし、気がつくとジャラヒの頭にはハリネズミのように数多のコードが刺さったヘルメット状のものが被せられていた。

「くくく…ジャラヒ殿の”脳力”を測るための装置であるな。安心するがいい、自爆装置は付いておらぬゆえな(ぽちぃ)」
「お、おいフィボちょっと待て…っ!」

被験者の誰何に対し答えにならぬ返答が帰ってくる。止める声も間に合わずスイッチが入れられると、つながれた機器からは様々な計測値が続々とはき出されていく。人前では見せない、引き締まって鋭い眼光を放つフィボナッチ。ヘルメットの下から喜怒哀楽の表情をのぞかせるジャラヒ。それらを心配げな表情で見守るカプレカ…。機器の発する騒音と時折発せられるジャラヒの呟き、それだけをBGM代わりにしてラボの時は進んでいった。



日も大きく西に傾く頃、ようやくそれは終わりの時刻を迎えた。
「ジャラヒ殿、気分はいかがかな?」
いつものにやけ顔に戻りつつ、ヘルメットを脱がせるフィボナッチが問う。
「………よくねぇよ。ってか疲れた。ってか何でわざわざリオの記憶を再生して俺に見せたんだ?よく出来てたな…ってかお前はデバガメか!?」
疲労困憊、といった体でジャラヒが問い返す。
「それは違うぞジャラヒ殿、再生して見せたのではない。記憶の底に眠っていたものを呼び覚まし見せてもらったのだ。まぁ、そのついでにジャラヒ殿の魔力の波長を確かめさせてもらったがな。くくく…」
「そうだジャラヒさん、夕食はどうされます?よろしければケヤキの方で用意してもらいますが。」
「ワリィ、あそこのメガ盛りってのもいいんだけどよ…今日はパスだわ。さっきも言ったけど疲れちまったしよ。それに…リオが俺の帰りを待ってっからな」
「うむ、リオ殿が待っているなら仕方がないな。まぁ、今日の成果はそう遅くならんうちに持っていくとしよう。お疲れ様であった」
「あぁ、ほんっと疲れたわ。ま、期待しすぎねぇ程度に待ってるぜ。じゃぁな」
「なぁフィボ、これはいったい何なんだ?」

ジャラヒがフィボナッチの研究室で実験を受けてから数日後、激団本拠を訪れたフィボナッチ。彼はどうだと言わんばかりに胸を張って発明品を示すが、ジャラヒは心底不思議そうな顔をして問いかけた。

「ん?何だと問われてもな…見たままのものだとしか言いようがないな。さて、どう説明したものか」

もともと思考が捻れているフィボナッチ、そこへ来てさらに独特の思考にひねりを加えたものを作ったらしく彼自身も説明をしがたいといった体のようだ。

「わかり辛いようで申し訳ありません。これは単独では機能しないもののようでして、こちらの2冊のうちいずれか…もしくは両方とセットにすることで効果を発揮できるらしいのです」

フィボナッチに同行してきたカプレカが追加を取り出しながら説明をする。彼自身も正確には理解していないのであろうが、フィボナッチに任せていては文字通り日が暮れてしまうと懸念したのであろう。
取り出された2つの冊子にはそれぞれ“赤雫★激団物語”“ジャラヒの子育て奮闘記”と表書きがなされていて“Blank Note”と書かれた最初の冊子の上に重ねられた。

「まぁ!坊ちゃんの奮闘記ですか。拝見してもよろしいですか?」
一方が丁度ティーポットと茶菓子を持ってきたドロシーの目にとまり興味を引く。あえて手出しをしてこなかった彼女にとってに映っていたかは気になるところなのであろうか。

「うむ、ジャラヒ殿とリオディーラ殿以外にとってはどれもただの文字記録に過ぎぬからな。まったく持ってかまわぬぞ。」
「…ん?俺とリオ以外にはただの文字記録…?ってことは何だ?この間カプレカが言っていた“命を落とすかもしれない危険性”ってのはいったい何なんだ?」

ただの記録であれば危険なぞあるはずもない、ジャラヒが疑問に思うのももっともである。それに対するフィボナッチの返答は彼らしくあり、脱力を誘うものであった。

「ん?それはな…測定中に構想を面白くなく感じてしまってだな。この形式のほうが安全でかつ面白そうだということで路線変更をしたのだ。」
「ところで主任、これらはどういう理屈でどのような効果のあるものなのですか?」
脱力しきり、突っ込みを入れる気力も失われかけているジャラヒに代わって助手の立ち位地からカプレカが問いかけの形で説明を促す。
「うむ、そうであった。それを説明せねばならなかったな。その前にふたつほど再確認させてもらうが…ジャラヒ殿、そもそもリオ殿は物語を核にしてジャラヒ殿の想念が形作っていた。それと、以前リオ殿が消滅したのはジャラヒ殿とハッピーエンドを迎え物語が完結してしまったから………それに相違はないな?」

肯くジャラヒにフィボナッチは説明を続ける。彼に語らせるといつまでも終わらないので要約すると以下のとおり
・Blank Noteはジャラヒと魔法的に接続することで彼とリオディーラに関わる  ことを自動的に記述していく。
・記述により物語の結末を強制的に取り払い、リオディーラ顕現の核とする。
・“赤雫★激団物語”・“ジャラヒの子育て奮闘記”はそれぞれ過去・現在のリオディーラを表し、Blank Noteと魔法的に接続することにより「リオディーラがプリアティルトでジャラヒと出会ってから消滅するまで」と、「ロイの魔力で顕現してから現在まで」のいずれかの記憶を持ったリオディーラとなる。両方をつないだ場合には、運がよければ両方の記憶を持つが、悪ければどちらの記憶も持たないまっさらな状態になる。
・どちらも接続しなかった場合にはオリジナルのリオディーラが現れるかもしれない。

「まぁ、これはあくまで可能性の事象平面から一点を取り出そうとするものだ。上手く行くか否かはまったく予想が付かぬ。よってどれかを選べということは私には言えぬな。どれも選ばないという選択もあるからな。くくく…」
「フィボ、説明がくどいぜ…。まぁ…必要なところは理解出来たっぽいからいいけどよ。」
説明が終わる頃、フィボナッチたちの来訪時に中天にあった太陽はすでに西に沈みかけていた。ジャラヒとともに隣で説明を聞いていたドロシーなどは意識を彼方へ退避させてしまっている。ジャラヒも疲労困憊といった体だが、それを覆い隠すほどの期待が見て取れる。

「主任、それではお暇しましょうか。ここから先は文字通りのお邪魔虫になるでしょうから。それでは、お邪魔いたしました。」

備えとして居座らんとするフィボナッチの首根っこをつかみカプレカは辞去していった。

「(ジャラヒさん、悔いの残らないようお願いしますよ…)」

一人、応接間に残ったジャラヒの選択は…そしてその結末は…また、別のお話。

果たして、どの物語がつながり、紡がれていくものなのでしょう…。

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Author:赤雫☆激団
英雄クロニクル サクセスサーバー
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